[SY11-2] 在宅歯科診療における医療ソーシャルワーカーの役割―主役を引き立たせる黒子として覚悟―
【略歴】
水越新人(みずこしあらと)。日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック医療ソーシャルワーカー 社会福祉士。2004年に城西国際大学経営情報学部福祉環境情報学科(現:福祉総合学部福祉総合学科)卒業。学部卒業後は、介護老人保健施設、医療療養型病院、総合病院、急性期病院、回復期リハビリテーション病院を経て現職。2024年4月より東北福祉大学大学院総合福祉学研究科社会福祉学専攻修士課程に在籍。
水越新人(みずこしあらと)。日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック医療ソーシャルワーカー 社会福祉士。2004年に城西国際大学経営情報学部福祉環境情報学科(現:福祉総合学部福祉総合学科)卒業。学部卒業後は、介護老人保健施設、医療療養型病院、総合病院、急性期病院、回復期リハビリテーション病院を経て現職。2024年4月より東北福祉大学大学院総合福祉学研究科社会福祉学専攻修士課程に在籍。
【抄録(Abstract)】
医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)とは、社会福祉の立場から、患者が病気やけがなどで生じた生活問題に対し、その問題解決に向けた援助を行う保健医療の場における、社会福祉専門職である(日本医療ソーシャルワーク学会より引用)。
MSWは、ナラティブアプローチをとくに重視しており、歯科医療に携わる場合も同様である。ナラティブアプローチでは患者の語らいに着目し、その語らいから表出された問題に対して、課題を明確化する。ここを相談の出発点として、患者や家族等と協働して課題を解決していく。食べることは生きることと言われることから、食べることにはナラティブな支援が必要と考える。特に、歯科クリニックに求められるMSWの役割は、患者が歯科診療を安心して受診し、中断することなく受診できる環境を整備することである。それにより、その人らしく地域で生活を続け、最期まで主役である患者を支えるため、MSWは黒子役として支援をしていく必要がある。
症例1:末期がんの夫を在宅で看取ったALSの妻との関りについて
75歳の女性。咀嚼障害を主訴に夫が同行し、当クリニック外来を受診した。神経疾患が疑われ専門医療機関に紹介しALSと診断を受けた。その後、当クリニックで、摂食支援を含めた口腔管理が行われた。2年後、夫に末期の胃がんの存在が明らかとなった。夫の予後を考慮し、口腔管理の必要性、終末期に向けた多職種との連携が必要である旨を説明し、家族や多職種を巻き込んだ支援を行った。その後、在宅での看取りまで支援を行った。夫の逝去後、遺されたALSの患者が、地域との繋がりが失われる可能性も危惧していた。そのためMSWは患者が地域から取り残されないための関りを歯科医師と共に行っている。
症例2:脳梗塞後遺症患者の経済的困窮に対する支援について
80歳の男性。患者本人より歯の動揺が著しいとのことで、歯科訪問診療の依頼を受けた。MSWがアセスメントを実施すると、経済的困窮により医科受診中断、複雑な家族関係や不仲が判明した。また、患者の既往歴を考慮すると、医科の関り、訪問看護、介護保険利用等の必要性が考えられた。特に経済的困窮に対しては支援が急務であった。そのため、地域包括支援センターや行政を巻き込み、経済的困窮の課題解決を図った。その後、患者は歯科医療に対して、本来の要望を述べられるようになるだけでなく、歯科医師も患者の経済的な心配をせず、必要な歯科診療を提供することが可能となった。
MSWは患者の生活課題の解決に取り組み、歯科医師による診療が円滑に進むように務めている。これらの2症例を通し、MSWにとっての地域生活者を最期まで支える覚悟について考察する。
本発表に対して開示すべきCOIはない。
医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)とは、社会福祉の立場から、患者が病気やけがなどで生じた生活問題に対し、その問題解決に向けた援助を行う保健医療の場における、社会福祉専門職である(日本医療ソーシャルワーク学会より引用)。
MSWは、ナラティブアプローチをとくに重視しており、歯科医療に携わる場合も同様である。ナラティブアプローチでは患者の語らいに着目し、その語らいから表出された問題に対して、課題を明確化する。ここを相談の出発点として、患者や家族等と協働して課題を解決していく。食べることは生きることと言われることから、食べることにはナラティブな支援が必要と考える。特に、歯科クリニックに求められるMSWの役割は、患者が歯科診療を安心して受診し、中断することなく受診できる環境を整備することである。それにより、その人らしく地域で生活を続け、最期まで主役である患者を支えるため、MSWは黒子役として支援をしていく必要がある。
症例1:末期がんの夫を在宅で看取ったALSの妻との関りについて
75歳の女性。咀嚼障害を主訴に夫が同行し、当クリニック外来を受診した。神経疾患が疑われ専門医療機関に紹介しALSと診断を受けた。その後、当クリニックで、摂食支援を含めた口腔管理が行われた。2年後、夫に末期の胃がんの存在が明らかとなった。夫の予後を考慮し、口腔管理の必要性、終末期に向けた多職種との連携が必要である旨を説明し、家族や多職種を巻き込んだ支援を行った。その後、在宅での看取りまで支援を行った。夫の逝去後、遺されたALSの患者が、地域との繋がりが失われる可能性も危惧していた。そのためMSWは患者が地域から取り残されないための関りを歯科医師と共に行っている。
症例2:脳梗塞後遺症患者の経済的困窮に対する支援について
80歳の男性。患者本人より歯の動揺が著しいとのことで、歯科訪問診療の依頼を受けた。MSWがアセスメントを実施すると、経済的困窮により医科受診中断、複雑な家族関係や不仲が判明した。また、患者の既往歴を考慮すると、医科の関り、訪問看護、介護保険利用等の必要性が考えられた。特に経済的困窮に対しては支援が急務であった。そのため、地域包括支援センターや行政を巻き込み、経済的困窮の課題解決を図った。その後、患者は歯科医療に対して、本来の要望を述べられるようになるだけでなく、歯科医師も患者の経済的な心配をせず、必要な歯科診療を提供することが可能となった。
MSWは患者の生活課題の解決に取り組み、歯科医師による診療が円滑に進むように務めている。これらの2症例を通し、MSWにとっての地域生活者を最期まで支える覚悟について考察する。
本発表に対して開示すべきCOIはない。