[SY12-4] 国保データベース(KDB)システムを活用したオーラルフレイル対策の今後の可能性
【略歴】
1998年 北海道大学歯学部卒
1998年 北海道大学歯学部付属病院 医員
1999年 北海道立渡島保健所
2001年 国立公衆衛生院専門課程(分割前期課程)修了
2003年 北海道保健福祉部地域保健課 主任技師
2009年 北海道大学大学院歯学研究科博士課程修了(博士(歯学)取得)
2010年 北海道保健福祉部福祉局高齢者保健福祉課 主任技師
2014年 札幌市保健福祉局保健所 歯科保健担当課長
2015年 厚生労働省老健局老人保健課 医療介護連携技術推進官
2016年 厚生労働省医政局歯科保健課歯科口腔保健推進室 兼任
2017年 札幌市保健福祉局保健所 母子保健・歯科保健担当部長
2018年 札幌市保健福祉局保健所 成人保健・歯科保健担当部長
1998年 北海道大学歯学部卒
1998年 北海道大学歯学部付属病院 医員
1999年 北海道立渡島保健所
2001年 国立公衆衛生院専門課程(分割前期課程)修了
2003年 北海道保健福祉部地域保健課 主任技師
2009年 北海道大学大学院歯学研究科博士課程修了(博士(歯学)取得)
2010年 北海道保健福祉部福祉局高齢者保健福祉課 主任技師
2014年 札幌市保健福祉局保健所 歯科保健担当課長
2015年 厚生労働省老健局老人保健課 医療介護連携技術推進官
2016年 厚生労働省医政局歯科保健課歯科口腔保健推進室 兼任
2017年 札幌市保健福祉局保健所 母子保健・歯科保健担当部長
2018年 札幌市保健福祉局保健所 成人保健・歯科保健担当部長
【抄録(Abstract)】
国保データベース(KDB)システムとは、市町村(保険者)の効果的な保健事業の実施のサポートを目的として構築されたシステムであり、「医療レセプト(後期高齢者医療含む)」「介護保険レセプト」「特定健診・特定保健指導」等の統計情報や個人情報からなるデータベースである。従来、自治体は、アンケートや健診情報等から地域の現状や課題を推測することしかできなかったが、後期高齢者医療制度を含む医療レセプトに加えて、介護レセプトも紐づいた膨大な保健医療情報を活用できる先進的なデータベースである。
また、厚生労働省は、超高齢社会への対応としてフレイル対策の充実を図ることとし、具体的な予算事業として「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」を創設した。これは、都道府県後期高齢者医療広域連合によるフレイル関連事業の財源を、市町村が介護予防事業等と一体的に実施できるようにしたものであり、全国全ての市町村では、令和6年度から高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に取り組むこととなっている。この高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施ではポピュレーションアプローチとして、高齢者の通いの場等に保健師、管理栄養士、歯科衛生士等の専門職を派遣し健康教育を行うとともに、ハイリスクアプローチとして、健診や医療受診がない健康状態不明者や疾病の重症化予防が必要な後期高齢者に専門職の訪問によるアウトリーチを行うこととしている。厚生労働省は、この健康状態不明者や疾病の重症化予防が必要な高齢者を把握するための方法として、KDBシステムの活用を必須要件として打ち出している。例えば、低栄養リスクでは75歳以上のBMI18.5Kg/㎡未満の在宅高齢者といった抽出条件や、糖尿病性腎症重症化予防事業では、HbA1cや血糖、血圧、医療受診状況等で抽出条件を選択できる。これまで、閉じこもりがちで健診等を受診しない高齢者への早期の介入は困難であったが、このKDBシステムによる医療レセプトや介護レセプト情報の活用により、疾病の重症化の危険性のあるハイリスクな高齢者の抽出が可能となっている。
歯科保健事業やオーラルフレイル対策においても、既に一部自治体においてKDBシステムの活用が始まっており、例えば後期高齢者訪問歯科健診事業の実施の際に、1年間歯科医療受診がない後期高齢者に個別通知を行っている事例などがある。その他、このKDBシステムの活用により、誤嚥性肺炎の再発予防を目的として、脳卒中や肺炎の既往があるにも関わらず一定期間歯科受診のない要介護高齢者の抽出や、糖尿病の既往があるにも関わらず歯科受診がない高齢者を抽出する等も可能となっている。
シンポジウムにおいては、このKDBシステムの概要と実際の抽出方法等について、紹介を行い、各地域におけるオーラルフレイル対策や歯科専門職によるアウトリーチの参考としてもらいたい。
国保データベース(KDB)システムとは、市町村(保険者)の効果的な保健事業の実施のサポートを目的として構築されたシステムであり、「医療レセプト(後期高齢者医療含む)」「介護保険レセプト」「特定健診・特定保健指導」等の統計情報や個人情報からなるデータベースである。従来、自治体は、アンケートや健診情報等から地域の現状や課題を推測することしかできなかったが、後期高齢者医療制度を含む医療レセプトに加えて、介護レセプトも紐づいた膨大な保健医療情報を活用できる先進的なデータベースである。
また、厚生労働省は、超高齢社会への対応としてフレイル対策の充実を図ることとし、具体的な予算事業として「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」を創設した。これは、都道府県後期高齢者医療広域連合によるフレイル関連事業の財源を、市町村が介護予防事業等と一体的に実施できるようにしたものであり、全国全ての市町村では、令和6年度から高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に取り組むこととなっている。この高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施ではポピュレーションアプローチとして、高齢者の通いの場等に保健師、管理栄養士、歯科衛生士等の専門職を派遣し健康教育を行うとともに、ハイリスクアプローチとして、健診や医療受診がない健康状態不明者や疾病の重症化予防が必要な後期高齢者に専門職の訪問によるアウトリーチを行うこととしている。厚生労働省は、この健康状態不明者や疾病の重症化予防が必要な高齢者を把握するための方法として、KDBシステムの活用を必須要件として打ち出している。例えば、低栄養リスクでは75歳以上のBMI18.5Kg/㎡未満の在宅高齢者といった抽出条件や、糖尿病性腎症重症化予防事業では、HbA1cや血糖、血圧、医療受診状況等で抽出条件を選択できる。これまで、閉じこもりがちで健診等を受診しない高齢者への早期の介入は困難であったが、このKDBシステムによる医療レセプトや介護レセプト情報の活用により、疾病の重症化の危険性のあるハイリスクな高齢者の抽出が可能となっている。
歯科保健事業やオーラルフレイル対策においても、既に一部自治体においてKDBシステムの活用が始まっており、例えば後期高齢者訪問歯科健診事業の実施の際に、1年間歯科医療受診がない後期高齢者に個別通知を行っている事例などがある。その他、このKDBシステムの活用により、誤嚥性肺炎の再発予防を目的として、脳卒中や肺炎の既往があるにも関わらず一定期間歯科受診のない要介護高齢者の抽出や、糖尿病の既往があるにも関わらず歯科受診がない高齢者を抽出する等も可能となっている。
シンポジウムにおいては、このKDBシステムの概要と実際の抽出方法等について、紹介を行い、各地域におけるオーラルフレイル対策や歯科専門職によるアウトリーチの参考としてもらいたい。