第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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指定演題

指定演題1
事例セッション 退院支援

Sat. Jun 30, 2018 3:40 PM - 4:40 PM 第5会場 (2階 平安)

座長:鴇田 猛(学校法人 鉄蕉館 亀田医療技術専門学校), 座長:箱崎 恵理(千葉県こども病院 副看護局長)

[指定1-3] 高度救命救急センターにおける脊椎・脊髄損傷患者の退院支援

安彦 武 (東北大学病院 高度救命救急センター)

―はじめに―
脊椎・脊髄損傷(以下、脊損)は外傷の中でも最も重症度の高い疾患の一つである。脊損患者は重篤な神経学的損傷のために、呼吸器系をはじめとした種々の合併症を併発する可能性があるばかりでなく、生命に直接影響を受ける危機的な状況に陥る場合もある。よって、初期治療は手術や集中治療への対応も可能な救命センターなどの施設がのぞまれる。また、脊損患者は全身状態が安定した後も長期のリハビリが必要であり、麻痺などの障害を残したまま療養生活を送らざるを得ない。救急加算が獲得できる期間を超えて入院を継続することは有効な病床管理とは言い難く、本来の施設機能を果たせなくなる可能性もでてくる。よって、退院支援による調整が必要であるが、脊損患者においては全身状態が安定しても介護が煩雑などの理由で受け入れ先がなく、長期入院を余儀なくされているのではないだろうか。
―当院の現状-
当救命センターは宮城県の三次救急施設の一つとして、ICU12床、HCU8床を有している。2017年1月~12月の患者受け入れ状況は、救急車受け入れ件数2847件、総受診数7591名、総入院数762名(内因性:406名、外因性:356名)であった。外因性疾患のうち外傷患者数は220名であり、脊損患者数は40名、約18%であった。平均入院期間は内因性疾患7.8日、外因性疾患8.8日であり、脊損患者のみでは13.6日とやや延長していた。
当救命センターでは入院時から退院支援のハイリスク患者をスクリーニングし、早期にメディカルソーシャルワーカーへつなげる対策を取っている。2017年の退院支援件数は296件であり、疾患別にみると、外因系123件、脊損26件であった。平均支援日数は全体で19.4日、外因系19.9日と変わらなかったが、脊損のみでは約26日と延長していた。
坂井らの報告では脊損患者の受け入れ困難な理由として、「スタッフ(専門医等)不足」、「設備が対応していない」、「診療報酬上の問題」、「合併症の対応が困難」、「転院先がない」などがあげられており、短期間では解決困難な問題が山積しているため、脊損医療を縮小せざるを得ない状況にあることがうかがえた。一般的に脊損患者の後方支援として、「物理的環境:家屋の改修、福祉機器の設置など」、「制度的環境:障害者福祉法、障害者自立支援法、自動車損害賠償法、労働者災害補償法など」、「人的環境:脊損への理解」、「社会・文化的環境:復学、職業復帰、イベントへの参加」などの環境調整があげられるが、急性期にどの項目をどのレベルまで解決するかは一様ではない。急性期~慢性期のいずれの時期を担当する医療機関も、責任をもって次のステップにつなぐことが重要である。
セッションでは事例をもとに救命センターにおける脊髄損傷患者の退院支援の在り方を考えたい。