第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

一般演題(口演) O7群
早期リハビリ

Sun. Jul 1, 2018 11:25 AM - 12:15 PM 第4会場 (2階 福寿)

座長:小島 朗(大原綜合病院 看護部/HCU), 座長:谷島 雅子(自治医科大学附属病院 救命救急センター)

[O7-4] ICUにおいて24時間以上人工呼吸器管理を受けた患者のリハビリテーションに関する実態調査

坂木 孝輔, 宮城 久仁子, 右近 好美, 山口 庸子, 小川 智宏, 荒井 由紀 (東京慈恵会医科大学附属病院)

【目的】
ICUに入室する重症患者は、鎮静や人工呼吸管理などによりベッド上での安静が強いられ、筋力低下や筋萎縮、関節拘縮などが生じやすい。近年、ICUにおける早期のリハビリテーションが、 患者のADLやQOLを早期に向上させ、ICU滞在日数や在院日数の短縮に貢献することが注目されている。しかし、理想と実際の現場の状況には課題があると言われている。そこで、ICUにおいて24時間以上人工呼吸器管理を受けた患者のICUにおけるリハビリテーションの実態を明らかにし、看護介入の示唆を得ることを目的とした。
【方法】
1.研究デザイン:診療録を用いた量的記述研究。2.研究対象:ICUに入室した患者のうち24時間以上人工呼吸器管理を必要とし、退院・転院時に生存していた患者。3.調査期間:2016年1月1日から2016年12月31日。4.データ収集方法:診療録からのデータを収集。5データ収集内容:基礎情報(年齢、性別、身長、体重、診療科、APACHE2スコア、入室期間、入院前のADL)、ICU在室中のリハビリ状況(ICU滞在期間におけるリハビリ介入の割合(看護師・理学療法士)、ICU滞在中のSICU Optimal Mobilisation Score(SOMS)の達成日と平均点(0:体動不可、1:ROM、2:坐位、3:立位、4:歩行)、看護ケアの内容(体交、清潔ケア、洗面、食事、呼吸器装着中のコミュニケーション))。6.分析方法:項目毎に単純集計を行った。7.倫理的配慮:所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
研究期間に人工呼吸器管理を必要とした480名のうち、未成年56名、退院時までの死亡47名、人工呼吸器管理24 時間未満の353名を除外した72名を対象とした。平均年齢は63.9±15.8歳、男性は45名(62.5%)、平均APACHE2は22.2±7.0点、人工呼吸管理時間は71.7[38.9-170.7]時間、ICU在室日数は8[6-13]日であった。診療科は心臓外科(37.5%)、神経内科(13.9%)、脳外科(11.1%)の順で多く、入院前のADLは73.6%が自立していた。ICU在室日数において看護師から11.1[0-25]%、理学療法士から33.3[12.5-42.8]%のリハビリ介入を受けており、SOMS平均点は0.89[0.33-1.43]点、ROM開始まで5[4-6]日かかり、全く介入の記載がない患者が15.3%いた。清潔ケア、体位交換、口腔ケア、食事に関して81.9%に患者本人の協力を得たり、筋力や関節可動域を評価した記載があった。
【考察】
ICUでの早期リハビリテーションは、2016年にオーストラリア、ドイツ、アメリカの5大学病院でおこなわれた多施設RCTにおいて、早期目標指向型の介入により有害事象の有意な増加なく、ICU入室初日から100%の患者でROMを行い、ICU在室日数の短縮と退院時の移動性の有意な改善が示されている。一方で本邦においてはリハビリテーションに関するプロトコールがないことや実施率が低いことが指摘されている。今回の調査においても、SOMS平均値は低く、リハビリテーションの介入が遅くなっている現状が見えてきた。これはプロトコールがなく、現場の状況に一任されていることが背景にあると考える。しかし、一方でベットサイドにいる看護師は日常生活動作のタイミングを活かし、清潔ケアや体位交換などの際に患者の力を引き出し、日常を取り戻すプロセスにおいて重要な関わりをしている状況も見えてきた。後ろ向き調査による限界があり、記載の漏れが多いことも推測される。今後は早期リハビリテーションに関するプロトコールの作成や、意図的な看護介入を行い、患者に対する影響を前向きに測定しより良い看護実践を模索していく必要があると考える。