[O7-5] 心大血管術後急性期リハビリテーションにおける離床の実態と関連要因の検討
【目的】心大血管手術を受けた患者の急性期リハビリテーションにおける離床状況の実態と関連要因を明らかにする。【方法】平成23年6月~平成24年3月に心大血管手術を受けた108名を対象に調査を実施した。離床状況および関連因子について離床状況調査用紙および診療録より収集し、得られたデータは統計分析ソフトSPSS ver.18を用いて分析した。初回端坐位、立位、および歩行病日の中央値をもとに早期群と後期群に分類し、術後の離床状況と要因による影響について、t検定、カイ二乗検定、およびロジスティック回帰分析を行って比較検討した。いずれも危険率5%未満を有意水準とした。本研究は所属大学医の倫理委員会の承認を得た上で実施した。対象候補者へ、研究目的、方法、データの取り扱いおよびプライバシーの保護等について文書および口頭で説明を行い、術前に書面による同意を得た。緊急手術患者については、術後に同様の説明を行い書面による同意を得た。また研究者の連絡先を明示し、調査終了後に対象者が調査に関する問い合わせが可能であるように取り計らった。【結果】対象者は男性84名(77.8%)、女性24名(22.2%)で年齢69.1±11.1歳(平均±標準偏差)であった。術式は、大血管手術では腹部大動脈置換術およびステントグラフト内挿術(以下、腹部およびステント術)が31例、上行弓部大動脈置換術が25例、下行大動脈置換術が9例、冠動脈バイパス術が12例、弁膜症手術が25例、その他の手術が6例であった。端坐位開始病日(以下、端坐位)は3.8±3.3病日(平均±標準偏差)、立位開始病日(以下、立位)は4.1±3.5病日、および歩行開始病日(以下、歩行)は5.6±4.7病日であった。手術内容ごとに端坐位、立位、および歩行の開始病日をみると、上行弓部大動脈置換術が最も遅い傾向にあり、腹部およびステント術が最も早い傾向にあった。随伴症状として、端坐位、立位、および歩行のいずれにおいてもふらつきが最も多くみられた。立位および歩行においては後期群で有意に多く見られた(p<0.05)。端坐位、立位および歩行のいずれにおいても、長期にわたる挿管、術後合併症の出現および術後認知機能障害の出現が後期群で有意に多く見られた(p<0.01)。術後最低アルブミン値(以下、術後最低Alb値)では、端坐位および歩行において早期群で有意に高値であり(p<0.01)、立位においても早期群で有意に高値であった(p<0.05)。 ロジスティック回帰分析の結果、立位に関してICUでの初回立位実施の有無、術後認知機能障害の有無およびICU滞在日数が影響していた。【考察】離床開始援助の際、手術による循環動態の変化および下肢筋力低下によるふらつきの出現が離床遅延要因となる可能性が示唆された。また、術後における認知機能障害およびAlb値の低下が離床遅延リスクとなる可能性があることが示された。心臓血管外科手術を受ける患者は様々な既往を抱えている場合が多く、加えて、高齢化傾向にあるとされている。そのため、術前活動量の低下が認められる患者に限らず、術前から積極的なリハビリテーションの導入が必要である。心大血管手術を受ける患者に対し、医師、看護師、理学療法士および栄養サポートチームと協働して術前から認知機能障害出現の予防を図り、食事摂取状況のアセスメントを行うことが重要である。また、ICUにおける立位の実施および早期退室が早期離床につながる可能性が明らかとなった。看護師は、ICUにおいて術直後からの体位変換、ギャッチアップ、および床上運動を促し、術翌日からは日常生活動作の中で端坐位時間の確保を行うといった積極的な離床を促してくことが重要である。