第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演) O8群
その他

2018年7月1日(日) 11:25 〜 12:15 第7会場 (2階 蓬莱)

座長:加藤 弘美(千葉県救急医療センター), 座長:星 豪人(医療法人社団 筑波記念会 筑波記念病院 看護管理室)

[O8-3] 救急外来における疼痛管理の現状と今後の課題

大麻 康之, 伊藤 敬介 (高知県・高知市病院企業団立高知医療センター)

【はじめに】疼痛は患者にとって大きな苦痛であるだけでなく、組織酸素分圧を低下させると言われている。そのため、組織への酸素運搬量を維持することが最優先に求められる初期診療において、疼痛管理は必要不可欠なケアであるといえる。一方で、先行研究では、疼痛を訴えて救急外来を受診した患者の多くが十分な疼痛の軽減がされていないといった報告があり、救急外来における疼痛管理は十分に行われていない可能性がある。そこで今回、当院救急外来における疼痛管理の実態調査と意識調査を行い、現状と今後の課題について検討した。【目的】救急外来における看護師による疼痛管理の現状と課題を明らかにする。【方法】疼痛を訴えて救急搬送される成人患者の電子カルテ経過表から、「NRS(Numerical Rating Scale)評価率」「鎮痛薬投与件数」「鎮痛薬投与までの時間」「NRS4以上の疼痛改善件数」の実態調査を行った。調査期間は2017年1月1日~1月31日とした。また、疼痛管理の意識調査は、救急外来専任看護師14名を対象にして行った。意識調査項目は、「NRS評価」「複数回の疼痛評価」「医師に対して鎮痛薬の促し」ができていたか、「救急外来での疼痛管理が十分か」「疼痛管理を十分に行えない原因には何があるか」であった。【倫理的配慮】本研究は対象施設倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】成人の救急搬送数件数は381件で、そのうち疼痛を訴えた症例は84件(22%)、NRS評価は12件(14.3%)であった。なかでも、疼痛を訴える患者の内訳で最も多かった外傷症例(60.7%)ではNRS評価率0%であった。一方で胸痛・腹痛・頭痛といった内因性疼痛症例(38.1%)のNRS評価率は41.3%であった。鎮痛薬使用件数は20件(23.8%)で、鎮痛薬投与までの平均時間は47.2分であった。NRS4以上の疼痛改善件数は3件(50%)であった。また、疼痛管理に対する意識調査では、救急外来における疼痛管理について78%が「不十分」と返答した。疼痛管理を十分に行えない原因として最も多かったのが、「診断に影響を与えそう」であった。【考察】NRS評価率で内因性疾患と外傷症例での格差が生じた原因としては、疼痛を訴える患者の内訳で最も多かった外傷症例(60.7%)ではNRS評価率が0%であったことから、外傷症例も疼痛評価の対象であるという認識が低いことが考えられた。そのため、疼痛管理プロトコールなどを作成し、外傷症例も含む疼痛を訴える患者すべてに共通の評価基準を設定することは有効であると考えられる。先行研究によると、救急領域では、救命を最優先としたチーム医療が行われるため、救命処置に関わる看護師の救急看護技術の教育ニードは高いとされている。一方で、救急外来における疼痛管理の教育に関しての文献は見当たらず、疼痛管理に関する十分な教育が行われていない現状がある。今回の意識調査で疼痛管理を積極的に行えない原因として「診断に影響を与えそう」が最も多かったことからも、疼痛管理よりも診断優先と考える看護師が多いことが予測された。急性腹症ガイドライン2015では、『原因にかかわらず鎮痛剤を使用することによって診察、診断をする上での弊害はない(レベル1推奨度A) 』と述べられている。外傷に関しても、鎮痛や鎮静を図ることで診察や検査がよりやりやすくなり、患者の苦痛を取り除き、患者満足度も高くなるとされている。こうした疼痛管理の知見を周知し意識改革を図るとともに、積極的な疼痛管理を行うことができるシステム作りを整備することが必要である。【結論】当院救急外来における疼痛管理は不十分であり、救急外来看護師が積極的な疼痛管理を行うためのシステム作りが必要である。