[O8-4] ICUにおける頭部挙上とポジショニング方法の統一に向けた取り組み
【背景・目的】
2010年に日本集中治療医学会が提唱したVAPバンドルにおいて、30°以上の頭部挙上が推奨されている。しかし、A病院ICUでは経験年数によって知識や技術に個人差が生じ、十分な挙上角度が確保されていない現状がある。2015年度のVAP感染率調査では9.6(/1000デバイス日)との結果が出ており、日本感染環境学会JHAIS委員会による全国平均の3倍であることが明らかとなった。
正しい頭部挙上角度の周知により、肺炎予防と嚥下機能の早期回復を目指し、また頭部挙上角度が30°以上の場合に生じうる苦痛にも注目し、頭部挙上とポジショニングについての知識と技術の統一化を図り、看護ケアの質向上を目指した。
【方法】
研究期間:平成29年8月~11月
対象者:A病院ICUに勤務する看護師長・研究者を除く看護師30名
実践内容:1.実践前後アンケートの実施。2.正しい頭部挙上角度と体位交換後の四肢のポジショニング、頸部異常位防止のための正しい頭部枕の使用についての勉強会の実施。3.ベッドフレームに30°挙上の目印となるシールを貼付。4.実践前後での頭部挙上角度の比較調査。
倫理的配慮:アンケート実施に際し、本実践の趣旨を説明すると共に、協力は強制ではないこと、回答から個人が特定されないよう配慮すること、結果を院内外で発表する可能性について明記し、回答をもって同意とした。
【結果】
1.実践前後アンケート
「頭部挙上に関する意識」について、実践前は「正確な角度での頭部挙上を行えている」と回答した看護師は52%に留まった。実践後には経験年数に関係なく85%が「30°以上となるように意識した」と回答し、多くの看護師に意識の改善が見られた。また、約半数の看護師が30°の高さに対し「イメージより実際の角度の方が高かった」と回答しており、挙上角度に対する認識のずれが明らかとなった。「頭部挙上角度の評価方法」については、挙上角度の目安として【30°】のシールをベッドフレームへ貼付し、これにより「角度の評価がしやすくなった」との意見が挙がった。「ポジショニングの実際」に関しては、全員が「身体がずれないよう意識・工夫している」と回答したが、頸部のポジショニングに限局すると、頭部用枕をタオル等で代用している看護師が26%であり、実践後のアンケートで「(今まで)過進展している人が多かったのではないか」との意見が挙がり、81%が「頸部が過伸展・側曲していないかより注目するようになった」と回答した。
2.頭部挙上角度の実践前後の比較
実践前に行った頭部挙上角度の測定では、全体の平均頭部挙上角度は18.25°、うち挿管患者は18.3°、非挿管患者は18.1°と挿管の有無に関わらず、大きく30°を下回った。実践後に再度頭部挙上角度の測定を行ったところ、全体の平均頭部挙上角度は31.7°、うち挿管患者は35°、非挿管患者は31.2°であった。
【考察】
今回の結果から、ほとんどの場面において、VAPバンドルで推奨されている頭部挙上角度30°に達していなかったことが判明した。今回の活動によって、挙上角度の大幅な上昇がみられ、活動が現状の改善に有効であったと考える。
ポジショニングに関しては、勉強会で周知はしたが実態調査までには至らなかった。また、A病院ICUではポジショニングに関するケア方法が統一されておらず、看護師個人の主観や経験に基づき実施されている現状がある。同様に頸部のポジショニングについてもタオルで枕の代用をしている看護師が多く、誤嚥予防の管理としては、頸部の屈曲角度が不十分である可能性が考えられた。引き続き、ポジショニングについて周知し枕の活用を促すと共に、評価の統一を目指した取り組みを続けていく必要がある。
2010年に日本集中治療医学会が提唱したVAPバンドルにおいて、30°以上の頭部挙上が推奨されている。しかし、A病院ICUでは経験年数によって知識や技術に個人差が生じ、十分な挙上角度が確保されていない現状がある。2015年度のVAP感染率調査では9.6(/1000デバイス日)との結果が出ており、日本感染環境学会JHAIS委員会による全国平均の3倍であることが明らかとなった。
正しい頭部挙上角度の周知により、肺炎予防と嚥下機能の早期回復を目指し、また頭部挙上角度が30°以上の場合に生じうる苦痛にも注目し、頭部挙上とポジショニングについての知識と技術の統一化を図り、看護ケアの質向上を目指した。
【方法】
研究期間:平成29年8月~11月
対象者:A病院ICUに勤務する看護師長・研究者を除く看護師30名
実践内容:1.実践前後アンケートの実施。2.正しい頭部挙上角度と体位交換後の四肢のポジショニング、頸部異常位防止のための正しい頭部枕の使用についての勉強会の実施。3.ベッドフレームに30°挙上の目印となるシールを貼付。4.実践前後での頭部挙上角度の比較調査。
倫理的配慮:アンケート実施に際し、本実践の趣旨を説明すると共に、協力は強制ではないこと、回答から個人が特定されないよう配慮すること、結果を院内外で発表する可能性について明記し、回答をもって同意とした。
【結果】
1.実践前後アンケート
「頭部挙上に関する意識」について、実践前は「正確な角度での頭部挙上を行えている」と回答した看護師は52%に留まった。実践後には経験年数に関係なく85%が「30°以上となるように意識した」と回答し、多くの看護師に意識の改善が見られた。また、約半数の看護師が30°の高さに対し「イメージより実際の角度の方が高かった」と回答しており、挙上角度に対する認識のずれが明らかとなった。「頭部挙上角度の評価方法」については、挙上角度の目安として【30°】のシールをベッドフレームへ貼付し、これにより「角度の評価がしやすくなった」との意見が挙がった。「ポジショニングの実際」に関しては、全員が「身体がずれないよう意識・工夫している」と回答したが、頸部のポジショニングに限局すると、頭部用枕をタオル等で代用している看護師が26%であり、実践後のアンケートで「(今まで)過進展している人が多かったのではないか」との意見が挙がり、81%が「頸部が過伸展・側曲していないかより注目するようになった」と回答した。
2.頭部挙上角度の実践前後の比較
実践前に行った頭部挙上角度の測定では、全体の平均頭部挙上角度は18.25°、うち挿管患者は18.3°、非挿管患者は18.1°と挿管の有無に関わらず、大きく30°を下回った。実践後に再度頭部挙上角度の測定を行ったところ、全体の平均頭部挙上角度は31.7°、うち挿管患者は35°、非挿管患者は31.2°であった。
【考察】
今回の結果から、ほとんどの場面において、VAPバンドルで推奨されている頭部挙上角度30°に達していなかったことが判明した。今回の活動によって、挙上角度の大幅な上昇がみられ、活動が現状の改善に有効であったと考える。
ポジショニングに関しては、勉強会で周知はしたが実態調査までには至らなかった。また、A病院ICUではポジショニングに関するケア方法が統一されておらず、看護師個人の主観や経験に基づき実施されている現状がある。同様に頸部のポジショニングについてもタオルで枕の代用をしている看護師が多く、誤嚥予防の管理としては、頸部の屈曲角度が不十分である可能性が考えられた。引き続き、ポジショニングについて周知し枕の活用を促すと共に、評価の統一を目指した取り組みを続けていく必要がある。