第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

一般演題(口演) O9群
せん妄ケア

Sun. Jul 1, 2018 1:40 PM - 2:40 PM 第4会場 (2階 福寿)

座長:木下 佳子(NTT東日本関東病院 集中治療部), 座長:始関 千加子(日本医科大学千葉北総病院)

[O9-2] 術後せん妄を発症している高齢患者の看護

井田 美幸, 中村 香代 (独立行政法人国立病院機構災害医療センター)

【はじめに】術後患者を看護する上でせん妄ケアを行うことは重要な看護の一つである。せん妄は生命予後の悪化や入院期間の延長に繋がるとされている。しかし、看護師の主観的な判断でせん妄の有無を判断されることが多いとされている。また、M・A・ニューマンは「病気と健康は分けがたい現象である」としており、術後せん妄を発症したA氏にとって家族と過ごす時間は安らぎの時間であった。そこで、ICDSCを用いて患者のせん妄状態を評価し、安楽な時間をできるだけ多く確保するために家族と共同して介入をした症例の報告を行う。
【目的】 術後せん妄を発症した患者が、安心した療養を継続するために家族と共同して介入をすることの必要性を明らかにする。
【倫理的配慮】本研究はケーススタディーとして取り組み患者の人権を損なうことのないように十分配慮し、個人情報の保護を遵守した。また、災害医療センター看護部倫理委員会の承認を得て行った。
【患者紹介】腰椎椎体骨折後脊椎後弯変形に対し、脊椎後方固定術後の80歳代女性のA氏。息子家族と同居。前回の手術時にせん妄の既往あり。A氏は「自分の足で残りの人生を送りたい」という思いで手術をした。家族は再びせん妄を発症し、A氏が混乱する事を心配していたが、「元気に歩いて帰れるように」と強く望んでいた。
【看護実践】看護問題:急性混乱
看護目標:A氏はICDSCの点数が悪化せず、療養を継続できる。
A氏は高齢であり環境の変化がせん妄を発症した原因であると考えた。A氏は夜間帯に家族の名前をしきりに叫んだり、つじつまの合わない発言をしていた。家族が患者を心配し生活の様子を尋ねる様子があった。術後1日目 CNS‐FACE2では特に情報と保証のニードが高く(共に3点台)、家族に対して十分に情報提供を行った。家族との充実した時間を取れるよう面会時に家族と共にケアを実施。A氏は家族と過ごす時間は、「痛くないよ、大丈夫」と表情穏やかに過ごしていた。
夜間帯は、家族の話を交えて安心できる環境を整えた。翌朝は自分の生い立ちや家族のことについて柔らかい表情で語る姿が見られた。
【結果】術日の夜間帯ICDSC:6点であったが、ICU退出時(術後3日目)には2点になった。
【考察】A氏のせん妄の原因は高齢であり環境の変化がせん妄を誘発したと考えた。せん妄を発症した後、A氏にとって家族が居ないICUという環境は不快な場所になっていたと考える。しかし、家族面会時は穏やかな表情をしていた。M・A・ニューマンは「健康は意識の拡張である」としており、せん妄状態にあるA氏であっても家族と過ごす時間は病を忘れることのできる安楽な時間であったと考えた。また、M・A・ニューマンは「健康はこれらの時間、空間、運動の相互の関連に生じる個別の意識の現れ」とも考えた。A氏にとっての家族と過ごす時間はICUという不快な環境を家族との会話による相互関係を生むことで、ICUが穏やかに過ごせる環境へと変化させる事ができたと言える。せん妄ケアにおいて患者の安楽とは何かを考える事が重要であると考える。
【結論】患者の安楽な環境を作る上では家族との時間が重要であり、安楽な環境はせん妄の症状の軽減に繋がることがわかった。
【まとめ】せん妄を発症している患者に対し、ICDSCで評価し、家族関係を踏まえ介入を行った。CNS‐FACE2の結果で家族に患者の情報提供し、家族の時間を確保したことで家族が落ち着いて面会をすることができた。A氏にとって家族と過ごす時間は気持ちも穏やかに過ごす時間でありせん妄の軽減に繋がった。家族との関係を維持し、せん妄を悪化させないための要因についてアセスメントし介入することが重要だと考える。