第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(示説)

一般演題(示説) P1群
その他

Sat. Jun 30, 2018 2:40 PM - 3:25 PM ポスター会場 (1階 展示ホール)

座長:桑村 直樹(公益社団法人日本看護協会 看護研修学校)

[P1-4] 術前訪問の有効性の実態調査

福井 彩夏, 角屋敷 健太, 武田 未希, 崎本 聖美 (東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)

【はじめに】術前訪問は手術を受ける患者への情報提供により患者・家族の不安の軽減を行うことで術後経過を良好に維持するために重要と言われており、手術室や集中治療室の看護師による術前訪問が行なわれている。当院集中治療室でも、集中治療室での治療・環境を患者が理解することで精神的ストレスの緩和を図ること、患者をフローで捉え個別性のある看護を提供することを目的に、集中治療室看護師による術前訪問を行っている。しかし集中治療室への入室予定患者すべてに術前訪問を行う事は、人員的時間的に困難な状況であった。そこで集中治療室看護師の術後経過の経験値から術前訪問を行う独自のスクリーニング項目を作成し、医学的看護的視点から患者を選択し術前訪問を行っている。このスクリーニングを使用した術前訪問が目的を達成できているかは明らかになっていない。
【研究目的】
1)術前訪問が患者の不安の軽減に繋がっているのか
2)スクリーニングを用いた術前訪問が患者のニーズと一致しているのか
3)術前訪問のニーズがある患者に特徴があるのか
【研究方法】
1)データ収集方法
配布方法:集中治療室看護師が手術前日までに、研究説明文書、自記式質問紙、封筒を入れたものを配布する。今研究の目的及び自記式質問紙への回答をもって研究への同意となることを口頭にて説明する。 
回収方法:自記式質問紙を封筒に入れ、病棟看護師に渡してもらう。病棟へ定期的に封筒の回収に行き、回収した封筒は病棟内の鍵のかかるキャビネットで保管した。
2)データ分析方法
量的データに関しては記述統計処理を行う。
3)対象者
術後集中治療室へ入室予定の患者全て
4)期間
2017年6月12日~12月31日
【倫理的配慮】東京慈恵会医科大学倫理委員会の承認を得(28-072(8315))、葛飾医療センターの臨床研究審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】118名へアンケートを配布し、55の回答を得た。そのうち有効回答数は16であった。不安は最小値0、最大値10で記述し、術前訪問の前後で不安を比較した。結果は平均-2.06、標準偏差4.13、P値=0.064であった。また術前訪問を、術前に希望する患者と希望しない患者で不安を比較した結果、前者は平均-4.00、標準偏差4.17、後者は平均-0.12、標準偏差3.27、P値=0.057であった。術前訪問を希望し、かつスクリーニングに該当する患者は3名だった。術前訪問後に不安が軽減した患者を年齢・性別・入院歴・手術歴・癌で手術をする・ICUへの入室/見学歴があるという項目で、それぞれ多変量解析で分析した結果、どの項目においても有意差は認められなかった。
【考察】術前訪問を行う事で不安が軽減される傾向にあることが明らかとなった。また術前訪問を希望している患者の方が、術前訪問を行う事でより不安を解消できると考えられる。術前訪問を希望している患者は、看護師が術前訪問が必要だと思う患者と必ずしも一致しておらず、スクリーニングのみでは術前訪問を必要としている患者すべてに術前訪問を行う事が困難であることが明らかとなった。しかし、術前訪問を希望する患者は不安が軽減する傾向にあるため、術前訪問を希望する患者に術前訪問を行う事がより効果的であると考える。
本研究の限界としては母集団が少ないことである。集中治療室看護師が予定の術前訪問を業務上実施出来なかったこと、手術を控えている患者にとってアンケート自体が負担となった可能性や複数のタイミングで回答をしなければならないアンケート自体の複雑さが有効回答数の低下を招いた原因と考えられる。