第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(示説)

一般演題(示説) P3群
看護教育・その他

2018年7月1日(日) 09:45 〜 10:15 ポスター会場 (1階 展示ホール)

座長:笠原 真弓(浜松医療センター 放射線・検査室)

[P3-2] 新生児搬送に同乗するNICU看護師の育成への取り組み-新生児搬送看護の看護技術評価表の作成を試みて-

杉山 美峰 (埼玉県立小児医療センター)

【目的】
 A病院の新生児病棟(以下NICU)では、新生児搬送用ドクターカー(以下搬送車)に、新生児科医師とNICU看護師が同乗し依頼先の病産院へ向かい、診療しながらA病院へ搬送するお迎え搬送を実施している。2014年度の総入院数395人中お迎え搬送は189件(47.8%)で、搬送に同乗する看護師の育成は重要な課題である。シミュレーション教育を受けた看護師は搬送経験のある看護師(以下指導者)と共に同乗し評価を受けるが、詳細な評価指標がない現状である。このことから指導者は、統一した指標による評価ができていないのではないか、また適切な指導を行えたか不安を抱えていると推察された。そこで、新生児搬送の看護技術評価表(以下、評価表とする)を作成し、実際トレーニングで使用後に、統一した指標で評価でき課題の明確化ができたかを明らかにする。また、指導者の不安が変化したかどうかについて明らかにすることとした
【方法】
1.対象:研究期間中にA病院NICU新生児搬送実地トレーニングを受ける看護師5名と指導者5名
2.方法:搬送トレーニングを受ける看護師と指導者へ、研究者が作成した評価表を配布した。評価表の内容は1)搬送車へ移動するまでのNICUでの準備、2)搬送車内の準備、3)依頼病院での看護実践、4)NICUまでの車内での看護実践、5)NICU到着から入院担当看護師への引き継ぎ、6)その他の6項目で構成した。トレーニング終了後の振り返りおよび評価後に、双方へ質問紙調査(多肢選択法と自由記載)を実施した。
3.研究調査期間:平成28年3月~平成28年12月
4.倫理的配慮:対象者には、目的・方法・参加の自由意志、不利益からの保護について書面で説明を行った。研究参加は、質問紙の提出をもって同意とした。質問紙は無記名とし、得られたデータは個人が特定されないように集計した。また、本研究は所属施設の看護部倫理審査会の承認を得て実施した。
5.用語の定義:新生児搬送とは病産院から依頼を受けて、A病院の新生児搬送用ドクターカーに新生児科医師と共にNICU看護師が同乗して新生児を迎えに行き、A病院へ搬送すること。
【結果】
 指導者5名中5名回収。看護師経験平均17.4年。搬送経験年数平均14.2年。過去同乗指導経験1名。搬送手順の再確認など指導時の事前準備は5名とも無、内4名が「突然の指導で準備できなかった」と回答した。評価表は5名が「役立つ」と回答した。理由は「一通りの流れに漏れがない」、「課題が明確になる」、「評価ポイントが明確」等であった。全員が「今後も活用したい」と回答、理由は「わかりやすく使いやすい」だった。指導経験のある1名は、指導に「不安はなかった」と回答した。その理由は「何度か指導経験があったから」であった。
 搬送トレーニングを受けた看護師5名中3名回収。看護師経験平均5年。3名が「課題が明確になった」、「今後の自己学習に役立つ」と回答した。また、評価表を用いたことで自身の成果を振り返り、現状把握できたかについては、「できた」と3名が回答した。
【考察】
 指導経験者の不安に関しては、複数の指導経験が不安を軽減する要因となっていた。今回指導経験者の回答が1名であり、経験の少ない指導者の不安については明らかにできなかった。しかし、搬送経験年数平均が10年以上であっても、搬送指導が初めての場合もあり指導に当たることがコンスタントにないという現状が明らかになった。指導は突然依頼されるため、指導のための事前準備できない場合が多い。しかし、評価表によって統一した指標での指導ができるとともに、搬送トレーニングを受けた看護師の課題が明確になり今後の自己学習に役立つと考えられた。