[P3-4] 大手術を受ける高齢患者A氏に対する不安への看護
【はじめに】不安は術後の順調な回復、すなわち適応状態に影響を及ぼすことがある。ICUでケアを受けた患者は自分の病気はICUで対応しなくてはならない程に重篤な状態なのかと思うようになる。また、極度の不安から精神に異常をきたしてしまうPICSの原因ともなると言われている。そこで今回、短期間でも看護師‐患者間の関係プロセスを意識して関わることで不安の軽減に繋がるのではではないかと考えた。【目的】大手術を受ける高齢患者A氏に対して不安を軽減する看護について振り返ることを目的とする。【倫理的配慮】災害医療センター看護部倫理審査委員会で承認を得た。【患者紹介】A氏 80歳代女性 胃切除後 夫と2人暮らし 家事はA氏が行っていた 入院時から漠然とした不安を抱えていた患者 【看護実践】当院ICUでは予定手術患者に対しICU入室前訪問を実施しており、A氏は入院時から漠然とした不安を抱えているという情報を診療録から得ていた。A氏は初め、心配そうな表情に見えた。「不安はいろいろありますね。話すと長くなるからいいです」と不安というキーワードは看護師へ伝えてくれたが、具体的な内容を話そうとしなかった。そこで術後の経過について細かく説明した。手術前後で看護師はA氏のことを理解したいという気持ちを忘れずに接し、安心して療養生活・退院後も生活できるように関わった。手術後、A氏は次第に看護師に対して具体的に不安の内容を話すようになった。その中でも「胃をとったことでの今後の食生活が不安。夫が早食いでね。つられないか心配」と胃を切除したことによる今後の食生活について一番不安を抱えていた。A氏のニードに応じられるように看護師は食事前には必ずパンフレットを使用し、注意点やダンピング症状について説明した。【結果】短期間でも看護師-患者間のプロセスを意識して関わることで不安の軽減に繋がり、A氏から「食事の際は今もパンフレットを読んでいます。看護師さんが親身になって考えてくれたから助かりました。食事のことは夫もパンフレットを読んでくれていて協力してくれるので頑張ります」という発言がみられた。【考察】ペプロウは患者‐看護師間の関係は4つの局面からなると述べている。方向付けの段階ではA氏の切実なニードは何かと考えた。結婚してから夫と食生活を共にしてきたA氏が今までの生活背景が変わることに対しての不安を抱えているのではないかと考えた。ペプロウは「患者は切実なニードをもっている。その問題に立ち向かうために援助が必要であると感じてはじめて、看護師と患者の最初の関係が始まる」と述べているようにA氏の言葉の中に隠されたキーワードを導くことが大切であると考える。同一化の段階ではA氏は次第に看護師に対して具体的に不安の内容を話すようになった。A氏は看護師との関係の中で患者自身が抱える思いを表現できていることがわかる。ペプロウの役割変遷を用いると今回の事例では「情報提供者」「相談相手」の機能をしたと思われる。開拓利用の局面では食生活について不安を抱えていることを看護師へ伝えていることから援助の必要性を感じて、援助を求めるようになったと考えられるため、毎食前にパンフレットを使用し説明した。問題解決の段階では毎食前にパンフレットを使用し説明したことでA氏の自信や意識付けに繋がったと考えられる。今後も、どんな患者に対してもICU入室という短い時間の中でもプロセスを意識し、関わっていくことが課題である。