[PD1-1] 人工呼吸器離脱に関わるコンフリクト:実際の離脱方法と課題
最近の集中治療室(ICU)では、人工呼吸器からの離脱は多職種によるチームで進めていくことが行われており、大学病院など人的資源が豊富な施設では一般的となりつつある。しかし、ICUの専従医が少ない施設や、診療科主治医がすべての治療方針を決定する施設では、医師の判断が人工呼吸器からの離脱を最も左右する。このように本邦では人工呼吸器離脱の方法は、施設ごとで異なっている可能性があり、我々は2015年に人工呼吸療法の実態を把握するため「人工呼吸療法に関する横断研究(MVP investigation)」を行った。方法:調査対象日の朝8時に集中治療室で人工呼吸を行っている患者を対象として、1施設3日間のデータを収集した。調査項目には、施設特性、患者特性、人工呼吸器設定値、実測値を含めた。結果:42施設の49ICUsから491名の人工呼吸実施患者のデータを収集した。研究に参加した49ICUsのうち人工呼吸離脱プロトコル、VAPバンドルは、それぞれ20.4%、61.2%で有していた。また、鎮静スケールはすべての施設が使用しており、せん妄スケール、鎮痛スケールはそれぞれ81.6%、83.7%のICUで使用していた。調査対象患者の平均年齢は、65.8歳、ICU在室5日目(中央値、4分位:3-10)、人工呼吸日数5日(3-9)で、人工呼吸に至った理由は急性呼吸不全(術後含む)が73.7%を占めていた。人工呼吸器の設定を集中治療医が行っていた割合は、ICU管理方針(専従医管理10施設、主治医管理9施設、混合管理30施設)によって異なっていた(80%, 0%, 50%, P<0.01)。離脱を試みていない患者347人のうち201人(57.9%)は、呼吸器設定値がFiO20.4以下かつPEEP8cmH2O以下であった。この患者群の人工呼吸器設定モードでは、非集中治療医は自発呼吸モードよりも(22.4% vs 40.8%, P<0.01)、SIMVモードを多く選択していた(41.4% vs 18.7%, P<0.01)。離脱を試みていない患者において自発呼吸モードをより選択していたのは、都市部の病院(オッズ比:2.07, 95%信頼区間:1.17 – 3.67, P=0.01)と専従医管理のICU(3.41, 1.13 – 10.27, 0.03)であった。
考察:ICUにおける人工呼吸療法は、施設特性によって異なっていることが明らかとなった。離脱を試みていないとされた患者の6割で、呼吸器設定が一般的な離脱可能基準を下回っており、客観的指標よりも医師の判断が優先されている実態が明らかとなった。さらに、非集中治療医は自発呼吸モードよりもSIMVモードを好んでいた。この研究では参加施設の地域的な偏りや重症度が不明であったなどの限界があるものの、離脱を含む標準的な人工呼吸療法の教育に地域差があることが影響している可能性が考えられた。
結語:本邦において人工呼吸療法の実践はICUの特定によって異なり、依然として離脱は医師の判断に委ねられていた。今後、多職種チームとして離脱に取り組むためには、施設内プロトコルのトレーニングが不可欠である。
考察:ICUにおける人工呼吸療法は、施設特性によって異なっていることが明らかとなった。離脱を試みていないとされた患者の6割で、呼吸器設定が一般的な離脱可能基準を下回っており、客観的指標よりも医師の判断が優先されている実態が明らかとなった。さらに、非集中治療医は自発呼吸モードよりもSIMVモードを好んでいた。この研究では参加施設の地域的な偏りや重症度が不明であったなどの限界があるものの、離脱を含む標準的な人工呼吸療法の教育に地域差があることが影響している可能性が考えられた。
結語:本邦において人工呼吸療法の実践はICUの特定によって異なり、依然として離脱は医師の判断に委ねられていた。今後、多職種チームとして離脱に取り組むためには、施設内プロトコルのトレーニングが不可欠である。