第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション3
日本集中治療医学会口腔ケア委員会合同パネルディスカッション 気管挿管患者の安全で効果的な口腔ケアの確立 -実践ケアガイドの導入と活用-

2018年7月1日(日) 14:50 〜 16:30 第6会場 (2階 瑞雲)

座長:明神 哲也(東京慈恵会医科大学医学部看護学科), 座長:北村 愛子(大阪府立大学 看護学研究科)

[PD3-4] 気管挿管患者の口腔ケア実践ガイドの活用によって期待する変化

門田 耕一 (岡山大学病院 総合診療棟ICU)

気管挿管患者に対する合併症の1つに、人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia;VAP)が挙げられる。その要因として、気管チューブのカフと気管壁の間隙から下気道への上気道細菌の播種(内因的要因)や人工呼吸器回路内の細菌の直接的な下気道への播種(外因的要因)があり、内因的要因に対する予防ケアとして、口腔ケアの充実は不可欠である。しかし、気管挿管患者の口腔ケアに関する指導が学部教育に組み込まれている例は少なく、さらに諸外国と比して「口腔ケアの方法」に統一見解が示されていない現状もある。Hutchinsら1)が、口腔ケアの標準化がVAP発生率低減に寄与する可能性を示している中、0.12%グルコン酸クロルヘキシジンが口腔粘膜に使用できない本邦においてはVAPバンドルに口腔ケアが明記されていないことも踏まえると、その検討と解決は急務と考える。
現在、日本集中治療医学会と日本クリティカルケア看護学会が合同で検討を重ねて『気管挿管患者の口腔ケア実践ガイド』の作成に取り組んでおり、一昨年前のパブリックコメントを踏まえて「実践可能かつ有効な方法の確立」を目指している。パブリックコメントでは「排唾管」や「洗口液」などの使用物品に関する内容から「洗浄法の是非」といった実践方法について、さらに「口腔ケアによるVAP予防効果の根拠は乏しい」などのケア自体の目的に至るまで、多くのご意見が示された。2学会が合同で口腔ケア実践ガイド作成を進めている意義は、「国内で行われている方法の中での平均的な合意点」を探っているのではなく、現状で明らかになっている文献を元に「気管挿管患者への有効な口腔ケアの基準」を学会が主導して発信していくことにある。それによって、どの施設においても「看護師が自信を持って口腔ケアを説明し、実践できる」という看護の質保証に繋がり、新たな課題も明確になり口腔ケアに関する議論が基準を持って活発になることを期待する。
特定の口腔ケアキットや洗口液を有効に活用しながら口腔ケアを実施している施設から、これまでの自施設の手法を継続しながら口腔ケアの質を担保している施設まで、多種多様であることは言うまでもない。本セッションを通じて、組織パターナリズムが大きく影響する「気管挿管患者への口腔ケア」に関するご意見を改めて皆様から頂き、「口腔ケア実践ガイド」の早期作成に繋げていきたい。
1) Hutchins K., Karras G., Erwin J., Sullivan KL. .Ventilator-associated pneumonia and oral care: A successful quality improvement project. Am J Infect Control 2009;37:590-7