第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

Pro-con

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ICUにおける新人看護師の配置(推進派vs慎重派)

2018年7月1日(日) 09:05 〜 09:45 第6会場 (2階 瑞雲)

座長:竹原 典子(日本医科大学付属病院)

[Pro1-2] 新人看護師にとってICUは酷な環境である

菅 広信 (秋田大学医学部附属病院 集中治療室)

ICUへの新人看護師配属、慎重派という立場で、いかにICUが新人に酷な場所であるかということを説明していきたい。皆様の施設では新卒看護師は配属されているだろうか。配属されていない施設は想像して欲しい。教育することができそうだろうか。異動者の教育だけでも、大変だと感じているのではないだろうか。もしくは、自分が異動された際のことを思い出して欲しい。まるで自分が新人にでもなったかのように、なぜか能力を発揮できずに、数カ月、もしくは年単位で過ごしたのではないだろうか。経験していないことに対して、初心者になってしまうことはベナーも指摘している。したがって、新人がICUで働くことの困難さは、現在ICUで働いている看護師の予想以上なのかもしれない。
 2003年、日本看護協会における調査では新人看護職員の離職率は9.2%と発表され、問題視された。理由としては、看護基礎教育と現場での乖離が一因とされ、2010年には、新人看護職員研修が努力義務化されている。新人看護職員研修ガイドラインも整備され、2014年には改訂も行われている。このような施策の評価の1つとして、2016年の新卒者の離職率は7.8%であった。数値の減少がみられるものの、劇的な効果があったとは言えない数値ではないだろうか。そして、その理由はなんだろうか。
 論文を確認すると山口らの研究では10名の看護師のインタビューから新人看護師の離職につながる要因をカテゴライズし、「初めて体験することの連続」、「大学教育とのギャップ」、「先輩達への気兼ねと恐怖」、「同期に対する劣等感と自己の未熟さの認知」の4つを示している。また、加藤らは就職6ヶ月時におけるバーンアウトの実態について、やる気を喚起する項目に「看護ケアの効果」、「患者からの感謝」を示し、やる気が低下する要因として、「知識不足」、「インシデント」、「心身の疲労」を示している。これらのことは一般病棟よりもICUという環境においては負の影響を示す事が多いと考えられる。例えば、「初めて体験することの連続」では一般病棟よりもICUの方が必然的に重症な症例が多く、様々なことが起こりやすい。「先輩達への気兼ねと恐怖」ではサブカテゴリーの内容に「すべての行動が先輩達の視線で監視されているという実感」と示されている。ICUでは一般病棟よりも、新人の行動はすべて確認しやすい環境にある。また、バーンアウトに関しては、意識のない症例が多いことから、自分の行ったケアに対して、患者から感謝をされにくいことがあげられる。ましてや、重症例に対しては自分の行った看護ケアがどのような意味を持ったのか、実感しにくいこともある。例だけでも、ICUという環境は新人が最初に配属される場所としては働きにくい場所と考えることができる。当日は実際にICUで働いた新人のアンケートも踏まえて、議論をしていきたいと考えている。