第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム2
クリティカルケアの安全管理教育を目的とした教授設計 ID(instructional design)とシステム的アプローチ

2018年6月30日(土) 15:40 〜 17:40 第2会場 (5階 小ホール)

座長:浅香 えみ子(獨協医科大学埼玉医療センター), 座長:明石 惠子(名古屋市立大学看護学部)

[S2-1] これからの医療安全マネジメントと医療安全管理者の育成

熊谷 雅美 (公益社団法人日本看護協会)

1999年を契機に日本における医療安全対策は、確実に実施されてきている。たとえば医療安全施策として、平成14年4月には「医療安全推進総合対策~医療事故の未然防止のために~」が発出され、医療法や診療報酬等で医療安全管理体制の整備を図った。またその対策の中には、医療事故防止のための職能団体の役割として「医療従事者の資質の向上や提供する医療の質の向上を図ることを通じて、患者の安全が確保されるよう努めること」が明記された。1.医療の質の向上2.学習する組織文化の醸成のため「医療安全」マネジメントを推進している。そのためには、「医療安全を重視する組織文化を醸成できる医療安全管理者の養成」が重要であると考え、2000年より医療安全管理者養成に取り組んでいる。しかし近年、医療の現場では、患者の病態の複雑化、医療の高度専門分化化等が急速に進み、整備されてきた医療安全管理体制の形骸化が生じるようになった。たとえば2014年大学附属病院等で相次ぐ医療事故の報道がなされ、高度かつ先端的な医療を提供する施設である特定機能病院においては、一層高いレベルの医療安全管理体制の構築が求められ、2016年6月医療法改正によって特定機能病院の医療安全管理部門に、専従の医師、薬剤師、看護師の配置が原則義務化された。
このような状況をふまえ、2016年、本会における医療安全管理者養成カリキュラムを見直した。医療安全管理者がめざすことは、組織横断的な活動を通して、「より安全な医療を提供できる組織」「学習する組織」を創ることである。そのために2017年度の医療安全管理者養成から1.医療機関の組織構造や特徴を知る2.組織の意思決定や組織変革について学ぶことを新たに加えた。また受講生は成人学習であり、これまでの経験を吟味し再構築できることをめざし、自身の経験した事例、準備された事例を使ってのグループワークを取り入れた。
日本は、世界で一番、医療及び少子高齢の先進国となった。これからは地域包括ケアシステムにおいて、医療安全管理の場が、病院から在宅・学校など、人が暮らし生きる場所すべてに広がっていく。医療安全管理者に求められることは、広い視座・マネジメント力・推論アセスメントであると考えている。学び続ける医療安全管理者の育成をめざしたい。