第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム5
大規模災害時におけるクリティカルケア部門の管理体制

2018年7月1日(日) 14:50 〜 16:30 第1会場 (5階 大ホール)

座長:佐々木 吉子(東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科), 座長:寺師 榮(東洋医療専門学校 救急救命士科)

[S5-1] 大規模災害時における集中治療の継続~治療の継続と医療機器運用の限界~

相嶋 一登 (横浜市立市民病院 臨床工学部)

【はじめに】集中治療部門は生命の危機に瀕した重症患者を、24時間を通じた濃密な 観察のもとに,先進医療技術を駆使して集中的に治療する場所である。集中治療には多くの医療機器とそれを支える電気および医療ガス設備が必要である。一方で過去に発生した地震災害では、電気を始めとするライフラインの途絶が数日以上発生しており、集中治療継続に重大な影響が出ている。
【大規模災害がクリティカルケアに及ぼす影響】過去には地震による電柱の倒壊、発電所や変電所の自動停止、医療施設内の受電設備、配電設備の故障などが原因となり停電が発生している。集中治療部門では非常電源が設置されており、自家発電機の稼働によって電力供給が行われことになっているが、過去の災害では自家発電機が稼働しなかったり、稼働しても短時間で停止したケースが報告されている。阪神淡路大震災では、給排水管や高置水槽の破損により漏水が発生し、長期にわたって電気、水道が使用出来なかったという事例がある。このように、耐震化された建物では建物の倒壊は防げるが、建物内の破損が見られている。これに対して免震構造では建物内の設備や医療機器の破損は発生しておらず、建物構造によって被害が異なっていた。人工呼吸器の駆動には電源とともに医療ガスが必要である。人工呼吸器にはバッテリが搭載されているが、集中治療で使用される人工呼吸器の場合は長くて60分程度しかもたない。また医療ガスの供給が途絶した場合には人工呼吸器の稼働は停止する。このような場合の代替手段としては徒手的換気があるが、集中治療ではPEEPの負荷、一回換気量の制限、自発呼吸への同調性を考慮すると徒手的換気の長時間実施は患者の状態を悪化させる可能性がある。血液透析の実施には大量の水道水およびRO水精製装置、個人用透析装置を稼働させるための多くの電力が必要となる。断水がある場合の血液透析実施は不可能である。持続腎代替療法では、水道水を必要としないため、電力のみで施行可能である。医療機器の転倒防止については、従来から様々な検討が行われている。耐震構造の建物で直下型地震を想定した場合にはキャスターロックを行わない方が良いとされているが、免震構造の建物での長周期地震動を想定した場合にはキャスタロックを行う方が良いとされており、これも建物構造によって対策が異なっている。大規模災害発生後はしばらく医療機器企業による修理対応が行えなくなることを考えると、施設の状況に応じた医療機器の損壊防止策を検討しておくことが必要である。【まとめ】大規模災害時における集中治療の継続には医療機器の稼働が必須であり、そのためには電気、水道、医療ガスの安定供給が必須となる。自施設の構造、設備を理解し、医療機器の損壊防止、医療機器使用不能時の代替手段を検討しておくことが必要である。