10:50 AM - 11:00 AM
[O1-2] O1-2
Keywords:集中治療室、ケア、快
【目的】
ICUに入室した患者の多くは、不快な記憶ばかりではなく快の記憶も持っていると言われている。これまでのICU入室体験による記憶の研究は、患者の不快な記憶に焦点があてられており快の記憶は注目されてこなかった。快の記憶はストレスを取り除き、患者が前に進むことを助ける作用があり、ストレスによって精神的外傷を負うことを防いでいる可能性が示唆されている。そこで本研究は、患者に快を与えるケアを実践するために、患者がICU入室中にどのような状況に置かれ、医療者からどのようなケアを受け、どのような快を感じたのかを明らかにすることを目的とした。
【研究方法】
研究デザインは事例研究である。調査期間は2018年8月から2018年12月である。研究対象者は予定手術を受けてICUに入室した20歳以上の同意の得られた者とした。データ収集方法は診断名や術式などの診療録調査、退院前に実施したICU入室中の患者の状況、受けたケア、快についての半構造化面接である。分析はSCAT(Steps for Coding and Theorization)の分析手法を用いた。事例ごとに患者の状況・ケア・快を示す言語データをセグメント化し4ステップのコーディングによってテーマを抽出し、そのテーマを用いて患者の状況、ケアと快のストーリーラインの記述と理論記述をした。
【倫理的配慮】
本研究は、所属施設及び研究協力施設の倫理委員会で承認を得た。そして、対象者の身体状況が安定した時期に目的、方法やプライバシー保護などを説明し、自由意思による同意を得た。
【結果】
対象となった4事例それぞれの患者の状況・ケア・快におけるテーマを用いたストーリーラインの一例を以下に示す。
A氏は50歳代女性で、胸腔鏡下食道亜全摘術を受けた。A氏は【安静時の息苦しさ】や【医療者の配慮の無い手技によって生じる痛みによる呼吸困難】を感じた状況で、ICUスタッフの【素早い異常への気づき】と【的確な呼吸の指導】によって、【息苦しさからの解放】され【安堵】と【安楽】を感じた。
B氏は70歳代女性で、冠動脈大動脈バイパス術を受けた。B氏は【何をされるのかわからない不安】な状態の中で、頻繁に訪れる看護師が【一つ一つケア行動を説明】することで【行われるケア内容の理解】が促され、【不安の消失】を感じた。
C氏は60歳代女性で、右開胸食道切除術を受けた。C氏は【医療環境の中で感じ取る様々な医療者の感情】がある中で、医療者の【相手の気持ちを尊重】し【問いかけるような言葉】や【決めつけない言い方】から、【思いやり】を感じ【医療者の言葉をすっと受容】できる【気持ちよさ】を感じた。
D氏は50歳代男性で、胸腔鏡下食道亜全摘術を受けた。D氏は【常時感じる急変への恐怖】があり【医療者が視界に入らないことへの恐怖】を感じる状況で、【医療者が常時身近に存在】し【目が合うだけでニードを察知】することや【視界に入る医療者の気にかけている様子】から【守られているような安心】を感じた。
【考察】
予定手術を受けて ICUに入室した患者のケアと快の特徴は、看護師が患者の辛さや望みを察することで、患者に心強さや安心がもたらされることであった。患者が受けたケアには、患者を安楽にしてあげたいという看護師の思いによるケアリングがあった。また、クリティカルな状態では、看護師が医学的に適切な臨床判断を行うための知識を基盤としたケア技術に患者の快が存在している。患者が快を感じる前提として、不安や辛さなどの患者の苦痛が存在していた。看護師には、医学的知識に基づく知識と技術、そして、患者の状況を的確に把握し患者の安楽に対するニーズや反応に合わせて介入をしていけるような柔軟さが求められると考える。
ICUに入室した患者の多くは、不快な記憶ばかりではなく快の記憶も持っていると言われている。これまでのICU入室体験による記憶の研究は、患者の不快な記憶に焦点があてられており快の記憶は注目されてこなかった。快の記憶はストレスを取り除き、患者が前に進むことを助ける作用があり、ストレスによって精神的外傷を負うことを防いでいる可能性が示唆されている。そこで本研究は、患者に快を与えるケアを実践するために、患者がICU入室中にどのような状況に置かれ、医療者からどのようなケアを受け、どのような快を感じたのかを明らかにすることを目的とした。
【研究方法】
研究デザインは事例研究である。調査期間は2018年8月から2018年12月である。研究対象者は予定手術を受けてICUに入室した20歳以上の同意の得られた者とした。データ収集方法は診断名や術式などの診療録調査、退院前に実施したICU入室中の患者の状況、受けたケア、快についての半構造化面接である。分析はSCAT(Steps for Coding and Theorization)の分析手法を用いた。事例ごとに患者の状況・ケア・快を示す言語データをセグメント化し4ステップのコーディングによってテーマを抽出し、そのテーマを用いて患者の状況、ケアと快のストーリーラインの記述と理論記述をした。
【倫理的配慮】
本研究は、所属施設及び研究協力施設の倫理委員会で承認を得た。そして、対象者の身体状況が安定した時期に目的、方法やプライバシー保護などを説明し、自由意思による同意を得た。
【結果】
対象となった4事例それぞれの患者の状況・ケア・快におけるテーマを用いたストーリーラインの一例を以下に示す。
A氏は50歳代女性で、胸腔鏡下食道亜全摘術を受けた。A氏は【安静時の息苦しさ】や【医療者の配慮の無い手技によって生じる痛みによる呼吸困難】を感じた状況で、ICUスタッフの【素早い異常への気づき】と【的確な呼吸の指導】によって、【息苦しさからの解放】され【安堵】と【安楽】を感じた。
B氏は70歳代女性で、冠動脈大動脈バイパス術を受けた。B氏は【何をされるのかわからない不安】な状態の中で、頻繁に訪れる看護師が【一つ一つケア行動を説明】することで【行われるケア内容の理解】が促され、【不安の消失】を感じた。
C氏は60歳代女性で、右開胸食道切除術を受けた。C氏は【医療環境の中で感じ取る様々な医療者の感情】がある中で、医療者の【相手の気持ちを尊重】し【問いかけるような言葉】や【決めつけない言い方】から、【思いやり】を感じ【医療者の言葉をすっと受容】できる【気持ちよさ】を感じた。
D氏は50歳代男性で、胸腔鏡下食道亜全摘術を受けた。D氏は【常時感じる急変への恐怖】があり【医療者が視界に入らないことへの恐怖】を感じる状況で、【医療者が常時身近に存在】し【目が合うだけでニードを察知】することや【視界に入る医療者の気にかけている様子】から【守られているような安心】を感じた。
【考察】
予定手術を受けて ICUに入室した患者のケアと快の特徴は、看護師が患者の辛さや望みを察することで、患者に心強さや安心がもたらされることであった。患者が受けたケアには、患者を安楽にしてあげたいという看護師の思いによるケアリングがあった。また、クリティカルな状態では、看護師が医学的に適切な臨床判断を行うための知識を基盤としたケア技術に患者の快が存在している。患者が快を感じる前提として、不安や辛さなどの患者の苦痛が存在していた。看護師には、医学的知識に基づく知識と技術、そして、患者の状況を的確に把握し患者の安楽に対するニーズや反応に合わせて介入をしていけるような柔軟さが求められると考える。