第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O1] 優秀演題

2019年6月15日(土) 10:40 〜 11:50 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:江川 幸二(神戸市看護大学),佐々木 吉子(東京医科歯科大学),榑松 久美子(北里大学病院),冨岡 小百合(大阪府立中河内救命救急センター)

11:10 〜 11:20

[O1-4] SBS version of CAPDの妥当性と信頼性の検討

○星野 晴彦1、松石 雄次朗1 (1. 筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学)

キーワード:小児、せん妄、鎮静

【目的】
 Cornell Assessment of Pediatric Delirium (CAPD)は小児集中治療室の患者のせん妄を評価するために作成されたせん妄アセスメントツールであるCAPDを評価するにあたってRichmond Agitation-Sedation Scale (RASS)を使用するが、RASSは目の動き、言葉への反応から鎮静深度を評価することから新生児や乳児の鎮静深度を適切に評価ができるか課題が残る。そのため我々は小児患者の鎮静深度を評価するために作成されたState Behavioral Scale (SBS)をRASSに置き換えて同様の評価ができるかを検証した。
【方法】
 本研究は当院小児集中治療室で行われた前向き観察研究である。対象は2017年5月から2018年5月に小児集中治療室に入室した患者をコンビニエンスサンプル法で抽出した。除外基準は原文と同様にRASS-4orSBS-2以下の患者とした。せん妄判断のゴールドスタンダードはDSM5を元に2名の精神科医が判断したものとした。使用するアセスメントツールは言語的、文化的意味内容を反映するために逆翻訳法を使用し日本語化した。CAPDは研究者(看護師)2名が評価した。SBSは挿管患者のために作成されたツールであることから、非挿管患者に対してはSBSの呼吸ドライブ、呼吸器への反応、咳の項目は除外し評価した。
妥当性を評価するために、測定したゴールドスタンダードの結果とCAPDのスコアを比較し、ROC曲線下面積、カットオフ値、感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率、正診率、陽性尤度比、陰性尤度比を求めた。看護師2名が評価したCAPDの結果のCohen’s κを測定し、信頼性の基準とした。本研究は筑波大学附属病院の倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】
 合計で152回CAPDの評価を行った。全ての測定の中で、62回の評価はRASS-4orSBS-2以下であったため除外した。結果、41名を90回観察し、本研究の対象とした。観察した患者の月齢の中央値は8ヶ月(IQR 6-16)、女性が50名(56%)、男性が40名(44%)、人工呼吸器患者は39名(43%)、重症度(Paediatric Index of Mortality Ⅱ:PIM2)の中央値は2.2(IQR; 0.9-3.9)であった。精神科の判断による全体のせん妄の発生率は47名(52%)であった。人工呼吸器患者(73% vs 39%)、重症度が中央値以上(PIM2≧2.2)の患者(64% vs 42%)、ミタゾラムが投与されている患者(73% vs 24%)のせん妄の発生率が高かった。SBSを使用したCAPDのROC曲線下面積は0.92 (95%CI; 86-98)、カットオフ値は9点、感度は89% (95%CI; 78-97) 、特異度は88% (95%C; 75-96)、陽性適中率は89%(95% CI;77-97)、陰性適中率は89% (95% CI; 75-96)、正診率89% (95% CI; 81-95)、陽性尤度比7.7 (95% CI; 3.4-17.6)、 陰性尤度比0.1 (95% CI; 0.05-0.3)であった。信頼性を示すκ値は0.87 (95% CI, 0.79-0.98)であった。各目のκ値は0.66 (95% CI;0.54-0.80)から 0.83 (95% CI;0.74-0.93)の値であった。
【考察】
 SBS version CAPDは原文と同様の高い妥当性と信頼性が認められた。本研究から、SBS version CAPDは臨床で有効に使用できるせん妄アセスメントスケールであると考えられる。