The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[O3] 呼吸・循環1

Sat. Jun 15, 2019 2:20 PM - 3:20 PM 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:坂本 美賀子(済生会熊本病院)

2:40 PM - 2:50 PM

[O3-3] O3-3

○橘 逸仁1、立野 淳子1、山崎 正勝1、高橋 葵1、有田 孝1、田戸 朝美2 (1. 小倉記念病院 看護部、2. 山口大学大学院医学系研究科)

Keywords:口腔ケア、看護教育

【目的】
 本研究の目的は、気管挿管患者に対する口腔ケアマニュアルの改訂の効果を、看護師による口腔ケア手技と患者の口腔内衛生環境の視点から検証することとした。
【方法】
 研究デザイン:口腔ケアマニュアル改訂前(対照群)と改定後(介入群)の看護師による気管挿管患者への口腔ケアの質を口腔ケア手技と患者の口腔内衛生環境の視点から比較する介入研究デザイン。
 対象者:看護経験が1年以上あるICU看護師で、気管挿管患者の口腔ケアを日常業務で行っている者
 研究期間:平成29年1月〜11月(対照群)、平成30年6月〜平成31年1月(介入群)
 介入方法:口腔ケアマニュアルは、1日1回のブラッシングケアと1日2回の保湿ケアを取り入れ、30°の頭部挙上や口腔内の観察、気道ケアの手順を統一するように改定した。改訂口腔ケアマニュアルは、個別に配布し、ケアの手順を解説した教育ビデオを最低1回視聴してもらった。
 データ収集方法:看護師1名につき、1名の気管挿管患者への昼のブラッシングケアを実施する際に、口腔ケア手技(ブラッシング時間、体位など)と患者の口腔内衛生状態として、細菌数、保湿度、汚染度を、口腔ケア直前、ブラッシング後、口腔ケア終了時の3時点(以後、前・中・後)で測定した。気管挿管患者の選定基準は、有歯者とし、年齢や疾患は問わなかった。細菌数は細菌カウンター®(パナソニック社製)、保湿度は口腔水分計モイスチャーチェッカームーカス®(ライフ社製)、汚染度はルミテスターPD-30®(キッコーマン社製)を用いて測定した。
 分析方法:口腔ケア手技は項目ごとに単純集計を行い、細菌数、保湿度、汚染度は二元配置分散分析にて分析した。
【倫理的配慮】院内倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
 1.対象者の背景:対照群は、看護師12名、平均看護経験年数は8.5年。介入群は、看護師13名、平均看護経験年数は8.2年。
 2. 患者の背景:対照群の平均年齢は72.2歳で、性別は女性7名、平均挿管日数は7.6日で、開心術後が6名と多かった。介入群の平均年齢は69.9歳で、性別は女性7名、平均挿管日数は7.8日で、開心術後が10名と多かった。
 3.口腔ケア手技:ブラッシングの平均時間は、対照群91.3秒、介入群144.7秒であり、体位の平均角度は、対照群13.5度、介入群20.8度であった。
 4.細菌数:測定結果は1〜7段階のフェイスマークで表示され、対照群の平均値は、前4.7、中4.3、後3.4であり、介入群の平均値は、前4.7、中5、後4.0であった。口腔ケアマニュアル改訂後は、改定前に比べて、口腔ケア実施前よりもブラッシング後に細菌数が増加し、口腔ケア終了後に細菌数は減少した(p<0.05)。
 5.保湿度:対照群の平均値は、前34.4、中49.8、後44.3であった。介入群の平均値は、前21.5、中24.7、後29.7であった。口腔ケアマニュアル改訂後は、改定前に比べて、口腔ケア実施前よりもブラッシング後に保湿度が増加し、口腔ケア終了後にも保湿度は開始前よりも高かった(p<0.05)。
 6.汚染度:対照群の平均値は、前16182.8RLU、中27455.0 RLU、後23179.6 RLUであった。介入群の平均値は、口腔ケア開始前5320.4 RLU、中6648.3 RLU、後3652.2 RLUであり、口腔ケアマニュアル改訂前後に違いは認めなかった。
【考察】
 細菌数は、ブラッシング後で上昇を認め、口腔ケア後で低下するパターンで、特に介入群ではその変化が大きかった。看護師による口腔ケア手技では、改定後にブラッシング時間は長くなり、実施体位も30°に近づいた。口腔ケアマニュアルの改訂が、看護師のブラッシングケアや、ブラッシングによって破壊されたプラークの吸引による回収手技の質の改善に有益であった可能性が考えられる。