The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[O3] 呼吸・循環1

Sat. Jun 15, 2019 2:20 PM - 3:20 PM 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:坂本 美賀子(済生会熊本病院)

2:50 PM - 3:00 PM

[O3-4] O3-4

大内 玲1,2、○大関 武1、相川 玄1、小林 俊介1、柴 優子1、中島 久雄1、松嶋 綾1、櫻本 秀明3 (1. 筑波大学附属病院集中治療室、2. 筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学、3. 茨城キリスト教大学)

Keywords:呼吸管理、気管内吸引、人工呼吸

【背景】
人工呼吸患者に対する気管内吸引に関して、米国呼吸ケア学会および日本呼吸療法医学会よりガイドラインが公表されているが、そのエビデンスは強固に支持されたものではない。また、閉鎖式吸引が一般的となった近年、ガイドラインの推奨方法以上の吸引圧、時間や深さで実施される場面が散見されるが、合併症発症頻度を含めた実態に関する調査は十分とは言えない。そのため本研究では、臨床で看護師が行う吸引手技の実態を明らかにし、吸引手技が患者へ与える影響を調査した。
【方法】
2018年6月から12月の間に、コンビニエンスサンプリングで抽出された人工呼吸患者を対象に前向き観察研究を実施した。看護師が行う吸引手技を直接観察法にて調査した。同一患者が複数回抽出されることによる影響を減らすため、同一患者に対する観察は最大3回までと規定した。吸引手技の観察に加え、吸引前後の生理学的変化等を観察し合併症を判断した。治療や介入を要さない軽微な合併症を、ベースラインから20%以上の血圧・脈拍数・一回換気量の変化、ベースラインから4%以上のSPO2低下、新たな不整脈の出現とした。致死的不整脈の出現、呼吸状態悪化に伴う人工呼吸器設定の変更を重大な合併症とし合併症の出現率を求めた。データは記述統計を用いて分析した。
本研究は、筑波大学附属病院臨床研究倫理委員会の承認を得た上で実施した。公開文書を提示し、また、患者データは匿名化を行い扱った。
【結果】
期間中85名、171ポイントの吸引手技を観察した。患者属性は、平均年齢63±16歳、男性75%、APACHE IIスコア中央値25(21-29)であった。吸引手技のうち、閉鎖式吸引が89%、開放式吸引が11%であった。吸引圧の中央値は263(225-300)mmHg、ガイドラインで推奨される150mmHg以下の吸引圧で実施した割合は7%であった。吸引時間の中央値は10秒、1吸引あたり15秒を超える手技を行っていた割合は12%であった。また、91%で深い吸引手技が実施されていた。
軽微な合併症は15件(9%)であり、一回換気量の低下など呼吸器系8件(3.5%)、脈拍数減少などの循環器系7件(3.0%)であった。一方で、重大な合併症は観察されなかった。
【考察】
ガイドラインでは浅い吸引チューブの挿入、100-150mmHg以下の吸引圧を用いることなどが推奨されているが、実際に看護師が行う吸引は深い手技が多く、吸引圧は高いことが明らかになった。先行研究においても、臨床では推奨圧以上の吸引圧を用いる機会が多いことが示されており、今回の結果と矛盾しない。事前に定めた軽微な合併症が9%で認められたが、胸腔内圧の変化や苦痛の緩和によるものと考えられた。今回の調査において、治療を要する重大な合併症は認められなかった。
【結論】
臨床で実施される吸引手技はガイドラインの推奨と比較して、深く、高い吸引圧で実施されている。しかし、吸引による合併症は少なく軽微であり、また重大な合併症は発生しなかった。