The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[O3] 呼吸・循環1

Sat. Jun 15, 2019 2:20 PM - 3:20 PM 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:坂本 美賀子(済生会熊本病院)

3:00 PM - 3:10 PM

[O3-5] O3-5

○竹林 洋子1 (1. JCHO九州病院)

Keywords:人工呼吸離脱困難、人工呼吸離脱プロトコル

【目的】
 人工呼吸離脱が困難と考えられた事例の離脱を経験知に基づき実施した.人工呼吸離脱プロトコルを参考に,介入の妥当性と離脱困難事例に必要な援助を考える.
【方法】
 入院カルテの記録を,人工呼吸離脱プロトコルを参考に振返る. 患者家族の同意を得て,施設の倫理審査を受け,個人が特定できないよう配慮する.
【症例】
 30代男性,先天性複雑心疾患で乳児期に複数回の手術を経て根治,成人後に大動脈人工弁置換術施行,今回ベントール手術を受けた.術後2日目に抜管,低酸素血症で再挿管となり,肺炎を併発し離脱に難渋した. 気管切開を視野に抜管を試す方針で再挿管7日目,医師が離脱を進めるよう指示した.
【結果】
1.SAT(自発覚醒トライアル)
 介入時点で患者はSAT成功基準を満たし,状況を認知し,説明を聞き,理解を示していた.離脱過程と離脱困難時の気管切開,呼吸訓練や気道浄化の必要性を具体的に説明し,患者に意志を確認した.また,中断は常時可能と伝え,質問に応じた.
2.SBT(自発呼吸トライアル)
 介入時の呼吸器設定はCPAP,FO20.7,PEEP15cmH2O,PS15cmH2Oで, SBT開始安全基準に適う状況ではなかったが,HR:88bpm,MAP:58mmHg,ScvO2:42%,RSBI:47回/min/Lで,血行動態や全身状態は安定していた.患者はファイティングが頻繁で,バッキングを誘発し,吸引も度々要し,酸素化や換気状態に相関しない呼吸困難感と2段様の頻呼吸を呈した.頻呼吸時は,ゆっくりと呼吸するよう傍で指導し改善することもあったが,発作の様に繰り返した.前日,臨床工学技士から呼気ポート式で吸気最大流速値が高い呼吸器に変更の提案があり,医師を交え検討した.変更後,患者は息が吸いやすくなったと述べたが,酸素化や換気状態と相関しない呼吸困難感と頻呼吸は,その後も認めた.初回の離脱失敗と臨床経過から,精神面の支援が重要と考え,離脱過程では意図的に達成体験を得る様な言葉掛けや配慮に努めた.また,希望に沿い,妻に同席を依頼した.
 離脱はPEEP値とサポート圧値のいずれか,あるいは両方を緩徐(2~5cmH2O)に漸減した.評価は患者の自覚と,呼吸仕事量の増大が呼吸訓練で是正可能かをもとに判断した.傍でフィジカルアセスメントを繰り返し,必要に応じて端坐位を含めた体位管理や呼吸訓練,咳嗽指導等で気道浄化を継続した.全過程で患者のペースに合わせ,参画を促した.呼吸の安定に時間を要した際,中断するか問うと,親のように慕う小児科医の退任を前に頑張りたいと述べたため,意思を尊重して妻と共に励ました.離脱開始から4時間,医師は呼吸器設定値と血液ガス検査値から抜管を判断したが,再度サポート圧を漸減した評価と非侵襲的陽圧換気を準備する必要性を話し合った上で,患者の返事を待ち,抜管した.抜管時はSBT成功基準を満たし,非侵襲的陽圧換気を2日施行し,低流量酸素療法に移行した.
【考察】
1.介入の妥当性
 SATの成立で患者は先を見据えた意思決定が促され, 認知可能な患者の訴えは評価を助け,効果的な支援に繋がった.しかし,SBT安全開始基準は満たさず,失敗の恐れがあった.離脱開始から抜管2時間後まで,末梢冷感は軽度持続したが,HR:88±4.8bpm,MAP:69±7.5mmHg,ScvO2:57±7.6%,RSBI:52±17回/min/Lで,血行動態悪化や呼吸不全進行は認めなかった.リスク認識と詳細な評価,適時的な支援,医師との問題共有により,介入は妥当であった.
2.離脱困難事例に必要な支援
 長期療養背景や患者/家族の支え,望みを知り,強みを引き出し,共感し信頼関係を築いた.患者は準備性を高め,言語的説得,情動的喚起や成功体験など自己効力感が高められ,参画が促進した.多職種連携による多面的支援の強化も重要であった.