The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[O5] 鎮痛・鎮静・せん妄1

Sat. Jun 15, 2019 3:40 PM - 4:40 PM 第3会場 (3F 小会議室31)

座長:神田 直樹(北海道医療大学)

4:10 PM - 4:20 PM

[O5-4] O5-4

○小高 貴直1 (1. 日本赤十字社 大阪赤十字病院)

Keywords:せん妄、ICDSC

【目的】
 近年、せん妄の発症は患者の予後を悪化させる要因であり、入院期間の延長とも関連がある事が明らかとなった。客観的にせん妄を評価し、早期介入を行うため、せん妄の評価ツールを用いる事が薦められている。今回、部署でのICDSCの導入に向けての取り組みを行う中で、せん妄評価ツール導入に関する課題が明らかになったため、ここに報告する。
【方法】
 調査方法:A病院救急病棟のスタッフに対して、せん妄の発症要因として認識していること、せん妄の評価ツールを知っているか、またそれを用いているか、せん妄患者に対するケアで困った経験を自由記載方式のアンケートを配布し調査し、23名より回答を得た。分析方法:得られた回答を質問項目ごとに集計し、A病院救急病棟のスタッフが認識している、せん妄の発症要因と、せん妄評価ツールの認知率、せん妄評価ツールの使用率を分析した。
【倫理的配慮】
 アンケートは無記名とし、個人が特定されないよう匿名化した。本研究は大阪赤十字病院看護部倫理委員会で承認された。
【結果】
 認知症をせん妄の発症要因として認識しているスタッフは80%であった。また同様にアルコール依存や薬物依存を発症要因として認識しているスタッフも80%であった。一方で電解質異常や炎症反応といった、疾患から惹起されるリスクを認識しているスタッフは30%にとどまった。せん妄評価ツールを知っているスタッフは73%であったが、使用しているスタッフは17%にとどまった。せん妄患者に対するケアに関して困っていることでは、70%のスタッフが「認知症とせん妄の判別」を困難であると感じていた。
【考察】
 A病院救急病棟に入院する患者の多くは、高齢であり、認知症の既往がある場合が多い。そのため、せん妄の発症要因として、認知症を挙げるスタッフが多くなったと考えられる。一方で救急病棟に入院する患者は、電解質異常や感染症、手術等による生体侵襲が大きく、それ自体がせん妄の発症リスクを高める要因になるという認識は低く、予防的なケアに繋がっていないと考えられた。また、認知症による混乱か、せん妄かの判断が出来ない要因として、せん妄評価ツールを使用していない事が考えられる。ICDSCやCAM-ICUを知っているスタッフであっても、部署内で統一したツールを設定していないため、ツールが共通言語として機能していないと考えられる。部署内で統一したせん妄評価ツールを導入するためには、入院患者に潜在的なせん妄ハイリスク要因があることを認識し、ルーチンとしてせん妄の評価を行っていく必要性を教育していく必要がある。またせん妄評価ツールの使い方に関しても、具体的な事例を通して、学習する機会を設定する必要があると考えられた。また精神科リエゾンチームや、認知症看護認定看護師との連携を図っていく必要があると考えられた。