The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[O5] 鎮痛・鎮静・せん妄1

Sat. Jun 15, 2019 3:40 PM - 4:40 PM 第3会場 (3F 小会議室31)

座長:神田 直樹(北海道医療大学)

4:20 PM - 4:30 PM

[O5-5] O5-5

○髙梨 奈保子1、宇都宮 明美2,3 (1. 船橋市立医療センター、2. 京都大学大学院、3. 京都大学医学部附属病院)

Keywords:胸部ステントグラフト内挿術、フレイル悪化予防、看護介入プログラム、高齢患者

【目的】
 胸部ステントグラフト内挿術(以下、TEVAR)を受けるフレイル高リスク高齢患者に対する看護介入プログラムの試行と評価を行い、看護の示唆を得る。
【方法】
 研究デザインは、事例研究である。対象者は、同意の得られたTEVARを受ける75歳以上の患者とした。独自に作成したフレイル悪化予防を志向したTEVAR周術期看護介入プログラム(術前のパンフレットを用いたフレイル予防教育、患者に応じたリハビリテーションの開始・中止基準の検討)を用いて看護外来と入院から退院まで、高齢者に起こりやすい合併症である筋力低下、せん妄・認知機能低下、呼吸器合併症を予防患者教育を含む実践をパッケージとして受け持ち看護師とともに介入した。自宅退院の有無、身体機能低下、栄養状態、せん妄の発症・認知機能を介入の評価とし、合わせて参加した看護師へのインタビューから本プログラムの実施可能性と課題を得ることとした。
【倫理的配慮】
 研究者所属施設、研究実施施設の倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
 介入した患者の年齢はA氏80歳代、B氏90歳代、C氏80歳代の3名だった。手術前はFriedのフレイル評価(歩行速度の低下、握力低下、強い疲労感、身体活動低下、予期せぬ体重減少)でA氏はフレイルの状態、B氏はプレ・フレイルの状態、C氏はフレイルの状態だった。TEVAR後の脳障害、脊髄神経障害・動脈損傷による重度合併症は起こさず経過した。転帰は2名が自宅、1名がTEVAR術前からの嚥下障害のためリハビリ病院への転院となった。入院期間はA氏10日、B氏8日、C氏107日だった。C氏は弓部大動脈置換術後、呼吸状態の悪化、嚥下障害の遷延が影響し、入院期間は弓部大動脈置換術前から2期的TEVARを含む日数である。退院時、A氏とC氏はFriedのフレイル評価、FIM評価は改善し、せん妄の発症はなく、認知機能の低下も認めなかった。B氏はFIM評価は改善し、Friedのフレイル評価は変化しなかった。せん妄の発症はなく、認知機能の低下も認めなかった。3名とも栄養状態のALBとTPが手術前より低下したが、体重減少はなかった。
 看護介入プログラムに対する意見を集中治療室看護師、一般病棟看護師の合計6名からインタビューをした。肯定的意見として、【計画内容が具体的に示されているので実施しやすい】【普段実施していることがまとめてあるので無理なくできる】【ケア内容が予防的介入であり実施しやすい】などだった。課題として、【チームで継続的に介入するためクリニカルパスみたいに、業務の中に組み込むことが必要である】【看護介入プログラムを使用するスタッフに対しての教育が必要である】【評価するには、もう少し事例が必要である】【導入するには、チーム間での意思統一が必要である】などだった。
【考察】
 3名とも栄養状態の低下を認めたが、フレイル評価の悪化はみられなかった。これは、フレイル状況を事前に確認したことで、患者・看護師ともにフレイルの認識が高まり継続できたこと、患者と看護師の治療的パートナーシップ形成が結果に影響したと考える。本研究では3人の介入にとどまっており、この看護介入プログラムの効果を示していくにはさらなるデータ収集が必要である。さらに、看護介入プログラム導入にはシステム化やスタッフ教育の必要性が示唆された。クリニカルパスのように業務へ組み込みことで、実施可能性が示唆された。しかし、新しいプログラム導入には患者に対する説明だけでなく、スタッフの意思統一も必要である。また外来から退院までのマネジメントする看護師の必要性も示唆された。