第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O7] 看護教育

2019年6月16日(日) 09:00 〜 10:10 第5会場 (B2F リハーサル室)

座長:宮本 いずみ(久留米大学)

09:20 〜 09:30

[O7-3] 院内急変前対応研修における行動変容レベルでの成果評価

○古厩 智美1,2、齋藤 美和1,2、吉田 順子1,2 (1. さいたま赤十字病院、2. 専門・認定看護師会)

キーワード:急変前対応研修、行動変容、成果評価

【目的】
 当院の専門・認定看護師会は、2012年にシナリオベースシミュレーション形式で急変前〜急変時リーダートレーニングの企画・運営を開始し、2014年には急変前兆候を察知するテクニカルスキル獲得を研修のコアスキルに変更し、リーダーとしてのチームビルディングを含めたノンテクニカルスキル構造を追加し、2段階研修とした。2017年からは急変前兆候を察知するテクニカルスキル獲得を中心にし、新卒者・日々リーダー・チームリーダー各役割に応じたノンテクニカルスキルを含めた3段階研修を行っている。今回は、本トレーニングのコアスキルの1つであり、入院患者の急変前予測因子としてエビデンスが確立している呼吸数(McGee,2012)の測定数変化を比較し、研修の行動変容レベルでの評価を行う。
【方法】
 1.研究デザイン:後ろ向き研究
 2.研究対象:電子カルテにおける診療録(呼吸数と比較対照として心拍数)
 3.研究期間:2019年1月
 4.データ収集方法
  電子カルテ検索可能な2015年1月〜12月に無作為抽出した各1日の全入院患者の呼吸数と対照としての心拍数、および2018年1月〜12月の各1日の全入院患者の呼吸数と心拍数を比較した。各月の調査日の無作為抽出方法はExcelのランダム関数で抽出した。
 5.データ分析方法:各データの記述統計と対応のない2群の平均値の差の検定を行った
【倫理的配慮】
 データ収集は院内規定に基づき個人が特定されない様に抽出し、呼吸数・心拍数は総数での扱いとした。院内看護研究審査会の審査を受けて行った。
【結果】
 当該研修の成果として、2015年と2018年の1月〜12月にランダムに設定した調査日における患者一人当たり呼吸数平均測定回数と心拍数平均測定回数をカウントした。2015年の調査日における患者一人当たり呼吸数平均測定回数は0.66〜1.26回/人/日、2018年は4.25〜5.49回/人/日であった。一方、2015年の心拍数平均測定回数は2.41〜2.9回/人/日で、2018年は6.85〜7.92回/人/日であった。
 2015年と2018年の呼吸数平均測定回数の2群の平均値の差の検定は、0.896±0.201 vs. 4.757±0.354回(p<0.0001)であった。一方、2015年と2018年の心拍数平均測定回数の2群の平均値の差の検定では、2.65±0.146 vs. 7.25±0.272(p<0.0001)と両者共に有意な差があった。
 また、2015年から2018年まで、研修効果をOJTに生かす狙いで、師長や看護係長・プリセプターリーダーへ研修の伝達や、スキル定着のための環境整備の依頼をした。研修生には、所属部署への伝達講習を事後課題とした。
 このプロセスでの受講者数の変遷は、2015年の研修(2段階)は年間70名だったが、2017年の3段階研修では年間240名となった。
【考察】
 平成30年度当院には861名の看護師が就業しており、そのうちの27.9%が当該研修のいずれかを受講している。その前年度の受講者を踏まえると、それより多い看護師が急変前兆候察知のためのスキルについて知識を得ていると考える。当該研修開始当初は呼吸数測定が定着しなかったが、エビデンスに基づくスキル獲得の教育と、Off-JTとOJTをつなぐ環境整備を併行する事で、行動変容が伺える成果を得ることができた。
 先行研究での研修評価は、カークパトリック研修評価レベル1の満足度もしくは、レベル2の研修中の知識・技能評価が殆どであり、行動変容についての評価はほとんどない。今後は、院内急変前対応システムに貢献できるよう、引き続き研修の評価を行い、受講生の特性に合わせたプログラム再構築を行う。