1:30 PM - 1:40 PM
[O9-3] O9-3
Keywords:予定外入室、RRS、重篤有害事象
【目的】
本研究の目的は、A病院HCUに予定外入室した患者の傾向分析から、重篤有害事象(Serious adverse event:SAE)を防ぐためのRRS(Rapid Response System)の課題を明らかにすることである。
【方法】
2018年1月1日から11月31日の期間に、HCUに予定外入室した患者のうち、手術・処置に伴う合併症や緊急入院を除外した者を対象に、患者概要(年齢、性別、入室時間、HCU入室理由、入室時MEWSスコア(Modified early warning score:修正早期警戒スコア)、転帰)と、病状変化の兆候の有無やその後の対応について、電子カルテより後視的にデータ収集を行った。病状変化の兆候は、HCU入室8±2時間前にキラーサインと思われる症状を担当看護師が記録していたものを「有」とした。データは項目ごとに単純集計を行なった。
研究に際し、A病院看護部倫理委員会の承認を得た。
【結果】
対象者数は70名であった。
1.患者の概要
性別は、男性が50名(71.4%)、平均年齢は77.8歳であった。HCU入室時間は、12時〜18時が27名(38.5%)と最も多く、次いで6時〜12時の25名(35.7%)が多かった。入室理由は、呼吸不全が35名(50.0%)と最も多く、循環不全17名(24.3%)、脳神経系障害11名(15.7%)と続いた。
入室時の平均MEWSスコア(呼吸数、心拍数、収縮期血圧、意識状態、体温の5項目について0〜3点の範囲で得点化し、合計0~15点の範囲で点数が高いほど急変の可能性が高いと評価する)は、4.31点であった。項目別では、呼吸数スコアの平均得点が1.86点と最も高く、ついで心拍数スコアが平均1.57点と高かった。
転帰は、生存が49名(70.0%)で、死亡21名(30.0%)であった。
2.病状変化の兆候の有無とその後の対応
HCU入室8±2時間前に病状変化の兆候を生じていた者は56名(80.0%)であった。病状変化の兆候として観察された症状は、SpO2低下が26名(37.1%)、頻呼吸11名(15.7%)、頻脈10名(14.3%)が多かった(n=56,重複回答あり)。病状変化の兆候を観察したあとに医師に報告がなされたのは21名(37.5%)で、医師が診察したのは20名(95.2%)であった。病状変化を把握したのち、医師への報告の有無による患者の死亡数は、「報告あり」が6名(6/21件28.5%)で、「報告なし」が11名(11/34件32.4%)であった。
【考察】
本研究では、入室時の平均MEWSスコアの項目では、呼吸数や心拍数スコアが高かった。これは、病状変化の前兆において、呼吸、心拍数の変化を捉えることの重要性を示している。
本研究では、HCU予定外入室患者の80%に何らかの病状変化の兆候を認めていたにも関わらず、医師への報告が行われたのは33%に留まっていることがわかった。「院内心肺停止患者の60~80%に急変の6〜8時間前に前兆が認められる」と言われているが、これらに関する専門的な教育を受ける機会が少ないことも影響していると考えられる。
病状変化の兆候を急変の前兆として認識できれば、異常の察知が早まり、医師報告数が増加し、SAEの減少、HCU入室時の重症度低下につながる可能性がある。今後は、病状変化を反映する観察項目を正確に評価するためのフィジカルアセスメントや急変の前兆を認めた場合の対応方法、医師への報告方法について教育を強化し、RRSへの早期情報提供へとつなげて行くことが課題である。
本研究の目的は、A病院HCUに予定外入室した患者の傾向分析から、重篤有害事象(Serious adverse event:SAE)を防ぐためのRRS(Rapid Response System)の課題を明らかにすることである。
【方法】
2018年1月1日から11月31日の期間に、HCUに予定外入室した患者のうち、手術・処置に伴う合併症や緊急入院を除外した者を対象に、患者概要(年齢、性別、入室時間、HCU入室理由、入室時MEWSスコア(Modified early warning score:修正早期警戒スコア)、転帰)と、病状変化の兆候の有無やその後の対応について、電子カルテより後視的にデータ収集を行った。病状変化の兆候は、HCU入室8±2時間前にキラーサインと思われる症状を担当看護師が記録していたものを「有」とした。データは項目ごとに単純集計を行なった。
研究に際し、A病院看護部倫理委員会の承認を得た。
【結果】
対象者数は70名であった。
1.患者の概要
性別は、男性が50名(71.4%)、平均年齢は77.8歳であった。HCU入室時間は、12時〜18時が27名(38.5%)と最も多く、次いで6時〜12時の25名(35.7%)が多かった。入室理由は、呼吸不全が35名(50.0%)と最も多く、循環不全17名(24.3%)、脳神経系障害11名(15.7%)と続いた。
入室時の平均MEWSスコア(呼吸数、心拍数、収縮期血圧、意識状態、体温の5項目について0〜3点の範囲で得点化し、合計0~15点の範囲で点数が高いほど急変の可能性が高いと評価する)は、4.31点であった。項目別では、呼吸数スコアの平均得点が1.86点と最も高く、ついで心拍数スコアが平均1.57点と高かった。
転帰は、生存が49名(70.0%)で、死亡21名(30.0%)であった。
2.病状変化の兆候の有無とその後の対応
HCU入室8±2時間前に病状変化の兆候を生じていた者は56名(80.0%)であった。病状変化の兆候として観察された症状は、SpO2低下が26名(37.1%)、頻呼吸11名(15.7%)、頻脈10名(14.3%)が多かった(n=56,重複回答あり)。病状変化の兆候を観察したあとに医師に報告がなされたのは21名(37.5%)で、医師が診察したのは20名(95.2%)であった。病状変化を把握したのち、医師への報告の有無による患者の死亡数は、「報告あり」が6名(6/21件28.5%)で、「報告なし」が11名(11/34件32.4%)であった。
【考察】
本研究では、入室時の平均MEWSスコアの項目では、呼吸数や心拍数スコアが高かった。これは、病状変化の前兆において、呼吸、心拍数の変化を捉えることの重要性を示している。
本研究では、HCU予定外入室患者の80%に何らかの病状変化の兆候を認めていたにも関わらず、医師への報告が行われたのは33%に留まっていることがわかった。「院内心肺停止患者の60~80%に急変の6〜8時間前に前兆が認められる」と言われているが、これらに関する専門的な教育を受ける機会が少ないことも影響していると考えられる。
病状変化の兆候を急変の前兆として認識できれば、異常の察知が早まり、医師報告数が増加し、SAEの減少、HCU入室時の重症度低下につながる可能性がある。今後は、病状変化を反映する観察項目を正確に評価するためのフィジカルアセスメントや急変の前兆を認めた場合の対応方法、医師への報告方法について教育を強化し、RRSへの早期情報提供へとつなげて行くことが課題である。