第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(示説)

[P1] 心理・社会的ケア

2019年6月15日(土) 14:40 〜 15:30 第7会場 (B1F コンベンションホール)

座長:徳永 美和子(九州中央病院)

14:47 〜 14:54

[P1-2] 急性期病棟におけるエンドオブライフ・ケアに必要なコミュニケーション技法伝達の有効性

○鴨木 玲央1、生田 由希子1、岡田 奈津美1、谷本 玲子1 (1. 鳥取大学医学部附属病院HCU)

キーワード:エンドオブライフケア

【はじめに】
 当院A病棟においては突如疾患によって死に直面する患者が多く入床している。そのような患者家族は予期しない急激な発症や病状の悪化、生命に対する不確かさによって多重なストレスを抱えている。そこで看護師は差し迫った死や来る死について考える人が最期まで最善の生を生きることができるように支援する「エンドオブライフ・ケア」を実施していくことが重要であると言われている。しかし当病棟看護師は患者家族が予後説明を受けた後に困ることなく返答することができると答えたのは、全体56名中の約6割であり、患者家族のコミュニケーションに対して苦手意識を持っていると分かった。そこで看護師がエンドオブライフ・ケアに対して自信を持てるようNURSE(命名、理解、承認、支持、探索)と沈黙・反復・問いかけのコミュニケーション技法に関する勉強会と患者家族へのコミュニケーションについてのロールプレイを実施した。そしてコミュニケーション技法が浸透することで、エンドオブライフ・ケアに関わる看護師の自信につながったのでその取り組みを報告する。
【目的】
 看護師がエンドオブライフ・ケアに必要なコミュニケーション技法であるNURSEと沈黙・反復・問いかけを習得しコミュニケーション技法の向上と家族看護の質の向上を図ることを目的とする。
【方法】
 当院において長期的な視点での看護実践や倫理的根拠をもった看護の実践においては発達段階であるとされているクリニカルラダーのⅠ、Ⅱに該当する看護師は4年目以下のものである。つまり彼らにはエンドオブライフ・ケアの実践に関して苦手意識が有り、根拠を持ち実践できていないのではと考えた。そこで高次集中治療室の4年目以下の看護師に対して事前にメールにて本取り組みの参加について自由参加である旨を伝え、同意を得た看護師14名を対象とし、患者役、看護師役となりシナリオを確認する。次にシナリオをみない状態で、NURSEと沈黙・反復・問いかけのコミュニケーション技法を用いたロールプレイを実施。実施3ヶ月後に対象者にアンケートをとり、勉強会前後におけるエンドオブライフ・ケアの実践状況について確認する。また、質問紙は無記名で回収した。
【結果】
 ロールプレイ直後の感想では「沈黙は実際にやってみると難しい。」「反復してもらうと自分の考えをまとめることができた。」「自分からは話しにくいことでも問いかけてもらえると話しやすかった。」との意見があった。ロールプレイ前後でのアンケートの結果は「患者家族に行う看護に関して情報収集ができる。」が上昇。「家族に対するコミュニケーションに苦手意識がある。」が減少。「医師から患者の予後に関する説明を受けた後終末期に関して話ができるようになった。」が上昇していた。エンドオブライフ・ケアの実践状況に関しての看護師が患者家族との関わり方で心掛けていることは、NURSEを用いて話を聞くようになった。沈黙を用いて家族と関わるようになった。患者家族の言葉を反復しながら思いを受け入れるようにしているようになったとの回答があった。
【考察】
 今回のロールプレイを通して新たなコミュニケーション技法を取得することで、看護師のエンドオブライフ・ケアを看護師の自信につながる一助につながった。今回の取り組みでは、エンドオブライフ・ケアの実践状況に関しては本人の自己評価を基にしている。当病棟ではエンドオブライフ・ケア援助士の育成にも取り組んでいるため、今後は専門的視点からみた、他者評価も行いエンドオブライフ・ケアの質の向上にも取り組む。