The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[P1] 心理・社会的ケア

Sat. Jun 15, 2019 2:40 PM - 3:30 PM 第7会場 (B1F コンベンションホール)

座長:徳永 美和子(九州中央病院)

2:54 PM - 3:01 PM

[P1-3] P1-3

○林 みよ子1 (1. 天理医療大学医療学部看護学科)

Keywords:脳血管疾患患者、家族、病気の不確かさ

【目的】
 本研究の目的は、急性期にある脳血管疾患患者の家族成員の抱く病気の不確かさの変化を明らかにすることである。
【方法】
 急性期〔集中治療室入室後2-3日目〕(T1)と亜急性期〔集中治療室から一般病棟への転棟1週間程度〕(T2)で、脳卒中患者の主な援助者となる家族成員を対象に「家族の病気の不確かさ尺度日本語版尺度(MUIS-FM-J)」(5段階。得点が高いほど不確かさが大きいことを示す)を用いてデータ収集した。対象者の属性とMUIS-FM-J得点の相関および2時点の得点差を比較した。分析はSPSS for Windows ver.19を用い、有意水準は5%未満とした。調査は研究者所属施設と調査協力施設の倫理審査で承認を受けて行った。質問紙は家族が心理的に安定していることを確認してから、本調査への協力の可否が治療や看護に影響しないこと・成果を関連学会で報告すること・質問紙は無記名であることなどを記載した文書を同封して配布し、郵送で返信とした。
【結果】
 配布した20名のうち、T1で11名・T2で12名から回答を得、MUIS-FM-J得点はそれぞれ85.8と78.0であった。MUIS-FM-J得点と属性との間に相関関係はなかった。両時点の回答者は7名で、患者は平均66.7歳で「手助けを受ければかなり自分でできる」が半数の4名、対象者は平均67.7歳、妻4名・夫1・息子1名・実母1名、全員が患者と同居、2名が仕事を持っていた。この7名の分析は以下のとおりであった:平均MUIS-FM-J得点は84.0(T1)から82.1(T2)と不確かさは改善したが、2時点での有意差はなかった。T1のMUIS-FM-J各項目について高得点は得点順に、「病がどれくらいで終わるのか予測できる」(4.00)、「退院したらどのように私は家族の世話をして行くのか漠然としている」(3.86)、「家族に何が起こるのかはっきりしない」(3.57)、「他に悪いところは何も見つからないことを確信している」(3.43)、「病気の経過は変化を続けている。調子の良い日もあれば悪い日もある」(3.29)、「症状は予測なく変化を続ける」(3.29)であったが、「他に悪いところは何も見つからないことを確信している」をのぞいて、T2ではそれぞれ3.71、2.86、2.29、2.71、2.71と低下した。また、「必要時にはそこにいる看護師に私は頼ることができる」と「医師や看護師は日常的な言葉を使ってくれるので行っていることは理解できる」はいずれも逆転項目であるが、T1の1.57点がT2で2.43点に上昇した。
【考察】
 T1では患者の病状変化の不確かさが大きかった。急性期は病状変化の先を判断しがたく、経過を見て判断するといった説明をされることが多いため、病状変化を不確かに捉えた可能性がある。先行研究(2014)では、MUIS-FM-Jは入院2日目100.8、3-13日目81.3と有意に低下しており、本研究とは異なる結果である。この先行研究は、調査時期や家族状況は類似するが、脳血管疾患以外に脳腫瘍患者も多い点が本研究と異なっていることから、患者の疾病経過が家族の病気の不確かさに関係する可能性が考えられる。看護師は、医師からの説明時の反応や患者の発症経過を踏まえて、家族の不確かさを判断する必要があると考える。また、本研究では、医師や看護師の存在や対応に関する項目は、わずかながらT2で上昇していた。これは、一般病棟では集中治療室のような密接な関わりが難しいために、家族は医師や看護師に頼りなさのようなものを感じる可能性がある。