The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Presentation information

Oral presentation

[P1] 心理・社会的ケア

Sat. Jun 15, 2019 2:40 PM - 3:30 PM 第7会場 (B1F コンベンションホール)

座長:徳永 美和子(九州中央病院)

3:01 PM - 3:08 PM

[P1-4] P1-4

○渡邊 誠1、杉崎 一美2 (1. 市立四日市病院、2. 四日市看護医療大学大学院)

Keywords:集中治療室、家族看護、臨床判断

【目的】
 集中治療室(Intensive Care Units:ICU)に緊急入室した患者家族の特徴として、突然の出来事に患者だけでなく家族成員がそれぞれ激しく混乱し、深刻な危機に陥っている。そのため危機状況に陥っている家族に対する看護支援も重要であるが、現実には患者への対応が主となり、家族に対して十分な支援ができているとはいい難い。一方、エキスパートナースにおいては家族の些細な言動から臨床判断し看護支援を行っている場面をみることがある。本研究の目的はICUへ緊急入室した患者の家族に対して、熟練看護師による看護支援とその支援に至った臨床判断の特徴を明らかにすることである。
【方法】
 質的帰納的記述的研究デザイン。データ収集期間は2015年10月19日~11月25日。研究対象者はICUを有するA県内の2総合病院に勤務する看護師経験7年以上、ICU経験5年以上で現在もICUで勤務している看護師である。調査内容は、①緊急入室時の患者の家族に行った具体的な支援内容、②支援を行うに至った理由、の2つを主軸としインタビューガイドに基づき半構造化面接法を行った。分析方法は、Berelson, B.の内容分析の手法を参考に、逐語録をコード化し、コードの類似性に基づき分類しサブカテゴリーを作成した。さらにサブカテゴリーの類似性に基づきカテゴリー、コアカテゴリーとした。
【倫理的配慮】
 本研究は所属大学および研究協力病院の倫理委員会による承諾を得て実施した。研究協力者に研究目的、方法、病院・個人が特定できないような配慮、プライバシーの保護について文書および口頭にて説明し、病院および個人が特定されるようなデータを全て削除し匿名性に努めた。
【結果】
 研究対象者は5名、看護師の臨床経験年数は平均17年、ICU経験年数は平均8.6年であった。以下コアカテゴリーは【】、カテゴリーは<>で示す。ICUへ緊急入室した患者の家族に対する熟練看護師による看護支援は、5つのカテゴリー<入室前に行う患者と家族に関する情報収集><看護チームの調整><家族への安心感・支持の提供><家族が患者へ近づけるための支援><状況に応じた家族への情報提供>から、【危機的状況から脱するための支援】のコアカテゴリーが抽出された。熟練看護師の臨床判断は、6つのカテゴリー<家族の状況を把握するための心構え><看護師側の受け入れ体制の査定><家族の心理・情緒面に関する情報の把握および分析><家族間のサポート力の査定><家族の状況に適した支援内容の選択><支援の継続の必要性を判断><家族に応じた説明の内容と説明時期の決定>から、【家族の全体像を形成】【家族が良好な状態に向かうための判断】の2つのコアカテゴリーが抽出された。
【考察】
 ICUへ緊急入室した患者の家族に対して熟練看護師による看護支援の特徴は、看護チームの調整を行いながら、家族が安心感を得られ患者に近づけるための支援から、状況に応じた情報提供を行い、全体として危機的状況から脱する支援を行っていた。その背景にある臨床判断の特徴は、過去の経験知を基盤とし、入室前の情報から推測した家族像と、直接対面した時の状況を総合的に分析して家族の全体像を形成させ、さらに家族が良好な状態に向かうための判断をしていた。看護支援と臨床判断の様相は、家族が危機的状態から脱することを目的としてほぼ同時に行われ、看護支援の最中にも継続的に家族の状況を評価・判断し、最初に形成した家族の全体像を修正・追加するという看護支援と臨床判断のサイクルを短時間のうちに繰り返し連続的に行っていると考えられた。