第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(示説)

[P2] 教育

2019年6月15日(土) 15:40 〜 16:30 第7会場 (B1F コンベンションホール)

座長:水流 洋平(日本看護協会看護研修学校)

15:54 〜 16:01

[P2-3] 虚血性心疾患で入院となった患者の家族への退院指導~胸骨圧迫の実技指導を導入して~

○宇佐美 真鈴1、坂口 由布子1、恩部 陽弥1 (1. 鳥取大学医学部附属病院CCU病棟)

キーワード:退院指導、実技指導

【目的】
 日本では1995年以降、脳卒中は減少しているが、虚血性心疾患の死亡率は横ばいで推移しており、なかでも冠動脈疾患は相対的には増加している。中でも急性冠症候群は突然死の原因として最も多く、病院到着前に死亡する場合も少なくない。
 A病院心疾患集中治療室(以下CCU病棟)では、虚血性心疾患患者の入院も多く、退院指導の一環として患者の家族へパンフレットを使用した心肺蘇生法を口頭で説明する指導を行ってきた。
 今回、虚血性心疾患で入院となった患者家族の退院後の不安軽減を図る目的で、心肺蘇生法の指導を見直し、口頭での指導から胸骨圧迫の実技指導を導入した取組を報告する。
【方法】
 準備期間:2018年6月~8月
 ・実技指導実施マニュアル、実技指導チェック表作成
 ・ARCS動機づけモデルを参考に、魅力ある指導法について救急看護認定看護師より全スタッフへ研修会を実施。併せて、指導の目的、方法をスタッフへ周知した。
 ・虚血性心疾患患者用の退院指導パンフレットの見直し。
 ・全スタッフが統一した指導ができるよう、音声入りのDVD指導用教材を作成。
 指導実施期間:2018年8月~2019年1月
 ・指導時期の決定:ピークCPK値、合併症の有無等をもとに主治医と入院期間についてカンファレンスを実施し指導時期を検討。最終的には指導を受ける家族と調整し指導日時を決定。
 ・実技指導実施マニュアルに基づき、家族へ胸骨圧迫の実技指導を実施。
 ・実技指導では、まずDVD教材を試聴してもらい、その後蘇生人形を用いて実際に胸骨圧迫を実践。
・指導者は実技指導チェック表に基づきチェックを行い、家族の理解度を確認した。
・指導時の家族の反応や様子は看護記録に記載し、CCU病棟ー循環器一般病棟スタッフで共有できるようにした。
【倫理的配慮】
 実技指導を受けなかったことで患者家族に不利益が生じないこと、発表の際には個人が特定されないことを口頭で説明し同意を得た。
【結果】
 2018年8月~2019年1月末までにCCU病棟入院となった患者は144名であり、そのうち虚血性心疾患患者は47名であった。死亡退院、指導を希望しない家族を除いた37名の患者家族に胸骨圧迫の実技指導を行った。患者の85%は初回発症であった。年齢構成は30~90歳台で60~70歳台が最も多く、男女比は8:2で男性が多い結果となった。指導を受けた家族と患者の関係性は、配偶者が49%で最も多く、子ども32%と続いた。指導を受けた家族からは「意外と力が要る」「体験するとしないとでは違うのでやって良かった」「知識を得ることが出来て良かった」等の感想が聞かれた。
【考察】
 虚血性心疾患で入院となった患者の家族の9割が胸骨圧迫の実技指導を希望されていた。近年、テレビやインターネット等から情報を得ることができ、虚血性心疾患が突然死の原因となること等一般市民の認知度が向上していることも、胸骨圧迫の実技指導の希望が高かった理由と考えられる。また指導方法をパンフレットの読み合わせによる口頭だけでなく、体験型の実技指導を取り入れたことは、受講者の興味・関心・満足度の向上に繋がり学習効果が高いと言われており、胸骨圧迫の実技指導の導入は有効であったと推察される。