第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD1] 重症患者の生活支援“安楽”を守るチャレンジ

2019年6月15日(土) 10:40 〜 11:50 第2会場 (3F 国際会議室)

座長:露木 菜緒(国際医療福祉大学成田病院準備事務局)、後藤 順一(河北総合病院)

10:40 〜 10:55

[PD1-1] 重症患者の「安楽」とは何か,安楽の概念や今後の課題

○大山 祐介1,2 (1. 山口大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程、2. 長崎大学生命医科学域保健学系)

キーワード:安楽、重症患者、概念

 安楽は安全・安楽として安全とともに金科玉条のように用いられることが多い言葉でもあり,看護基礎教育のなかでも当然のように学習してきた.その影響からか私自身も臨床において看護実践するなかで,安全と安楽を漠然としたイメージで捉え,実践していたように思う.安楽は看護における基本原則であり,看護の目標や患者の回復のための戦略とされ,クリティカルケア看護領域においても重要な概念である.特にクリティカルケア看護の対象となる患者は,生命に直接かかわるような健康問題を抱えた重症患者であることから,患者は多様な安楽のニーズがある状況であり,安楽を目指したチャレンジが行われていると考える.
 日本では1954年の看護の文献において,安楽を重要用語として最初に記述されたと言われている.一方で,ソーシャルメディアにおける安楽を調査した研究では,安楽という言葉は一般的使用頻度が低いことが明らかになっている.そのため,安楽という概念は看護独自のものとして存在していると考える.また,これまでの看護用語の安楽の使われ方としては,看護診断における「安楽の変調」として,疼痛,悪心/嘔吐,掻痒感の3つが阻害要因としてあげられている.この「安楽の変調」という看護診断は身体的側面における苦痛の要素が強いことが分かる.そして,「安楽な体位にする」のように,身体的な苦痛を取り除く,看護技術として使用されることも多いように思う.
 このように安楽という用語は一般的には使用する機会が少ないこと,看護独自の意味があること,そして,以前多用されていた「安楽の変調」という看護診断などによるイメージが強く,限定的な捉え方をされやすいことも考えられる.
 現在では,日本看護科学学会の用語集に掲載されている安楽やNANDA-I看護診断の「安楽障害」の定義はKolcabaのcomfort理論に基づいている.この理論では,「comfortは緩和,安心,超越に対するニードが,経験の4つのコンテクスト(身体的,サイコスピリット的,社会的,環境的)において満たされることにより,自分が強められているという即時的な経験である」と定義されている.このKolcabaのcomfortの概念の定義やcomfortの3つのタイプ,経験の4つのコンテクストについて理解することで,クリティカルケア看護領域における安楽の理解につながると考える.しかし,クリティカルケア看護領域のように治療や病気の経過が変化しやすい患者を対象とした場合に適用の難しさがあるとの指摘もある.そこで,クリティカルケア看護領域におけるcomfortの研究も合わせて紹介し,クリティカルケア看護領域における安楽の概念の理解が深まることを期待したい.

 本セッションでは,安楽に関する理論や研究に視点を向け,重症患者の安楽の概念や課題について紹介する.