The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

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Oral presentation

[PD3] 重症患者の生活支援“食べる”機能を守るチャレンジ

Sat. Jun 15, 2019 4:40 PM - 6:00 PM 第4会場 (1F 中会議室)

座長:亀井 有子(市立岸和田市民病院)、西村 祐枝(岡山市立総合医療センター岡山市立市民病院)

4:55 PM - 5:10 PM

[PD3-2] PD3-2

○隈本 伸生1 (1. 小倉記念病院 看護部 クオリティマネジメント科)

Keywords:嚥下機能、重症患者、経口摂取

 本邦においては、超高齢社会となり今後も高齢化率が高くなることが予測されている。高齢人口の急激な増加により疾病構造が変化してきていることで、入院患者の背景も大きく変わろうとしている。また、高齢者は不可逆的な身体機能低下に加え様々な基礎疾患を抱えているケースが多く、疾患の急性増悪によりクリティカルケアでの加療を受ける高齢患者も多くなっている。このような背景がある高齢者では、過大侵襲を脱した後、生命は維持できたものの「口から食べる」ことができなくなることも少なくない。そのため「食べる」機能を守るチャレンジを摂食嚥下障害看護認定看護師の立場から述べる。
 高齢者では、加齢に伴う身体機能の低下を念頭に置いた関りが必要となる。「食べる」機能に最も関連した嚥下機能も同様に低下していくことは一般的にも知られている。しかし、過大侵襲を脱した後、誤嚥性肺炎発症を恐れるがあまり過剰なリスク管理が行われるため、「食べる」ことを避け長期の絶食を強いられる傾向にある。このような問題に対して、私たちができるケアを考えていかなければならない。
 経口摂取開始が遅れる要因には、経口摂取開始基準が不明確であることが挙げられる。医療者の主観的に食べることができないと判断するのではなく、客観的に評価することが重要である。評価するポイントは口腔内の観察を行い、口腔内の清潔保持に努め「食べるための準備」から始める。口腔内環境を整えることは、誤嚥性肺炎予防の観点からも重要である。次に、覚醒状況と呼吸状態の観察を行い、評価が可能な状況であれば、速やかに嚥下機能評価を実施し、経口摂取が可能であるかを評価する必要がある。
 嚥下機能評価では、嚥下に関連したフィジカルの評価を行った後に、ベッドサイドで実施可能な標準化された嚥下障害スクリーニングテストを行うことが推奨されている。スクリーニングテストで代表的なものにRSST(反復唾液嚥下テスト)、MWST(改定水飲みテスト)、FT(フードテスト)などがあるが、これらを患者の状況に合わせて行うことが必要である。経口摂取が可能であれば患者の嚥下機能に合わせた食事の提供を行うが、初回の食事摂取には注意が必要である。また、患者の状態に変化があるときは再評価を行い適切な対応が必要となる。重症患者への経口摂取に向けた取り組みでは、ケアと評価を繰り返して行うことが「安全に食べる」食べる機能を守ることに繋がる。
 重症患者の栄養療法においては、日本集中医療学会より出版されている日本版重症患者の栄養療法ガイドラインの中で48時間以内の経腸栄養開始が推奨されている。そのため各施設で早期経腸栄養開始に向けた取り組みが多くされているようになりプロトコル作成などで標準的にケアが行われるようになってきている。しかし、経腸栄養の投与方法は経管栄養での投与のみで、経口摂取に関しては触れられていない。重症患者の経口摂取に関する指針もガイドラインに追加されると重症患者の「食べる機能を守る」取り組みが広がっていくのではないかと考える。また、最高の栄養摂取手段である経口摂取を目指すべきである。