The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

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Oral presentation

[PD3] 重症患者の生活支援“食べる”機能を守るチャレンジ

Sat. Jun 15, 2019 4:40 PM - 6:00 PM 第4会場 (1F 中会議室)

座長:亀井 有子(市立岸和田市民病院)、西村 祐枝(岡山市立総合医療センター岡山市立市民病院)

5:25 PM - 5:40 PM

[PD3-4] PD3-4

○田邉 美保子1 (1. 大分大学医学部附属病院臨床栄養管理室)

Keywords:栄養管理

 高齢者、特に75歳以上の超高齢者にとって長期の絶食は嚥下機能低下のリスクであり、術後早期の経口摂取開始が望まれる。そのため、周術期における感染症など合併症の発生は絶食期間の長期化につながる要因の1つとなる。また近年、サルコペニア状態にある高齢者の手術リスクや合併症の発生リスクが高いことが報告されている。絶食管理後の嚥下障害の発生は、栄養状態の低下および骨格筋量の低下のある患者が引き起しやすいとされる。今回のテーマである「重症患者の生活支援、"食べる"機能を守る」ため、周術期の栄養管理について、また実際に周術期を経過した症例を振り返り、今後の課題について検討する。
 周術期での感染症対策の重要なポイントの1つが、腸管の使用である。重症患者の栄養療法ガイドライン(J-CCNTG)では、腸管の使用が可能な患者に対し、治療開始後24~48時間以内の速やかな経腸栄養の開始を推奨している。腸管の使用により、腸管粘膜の保護、バクテリアルトランスロケーションの抑制、免疫機能の保持を目的としている。さらに中心静脈栄養によるカテーテル感染のリスク低減にもつながる。また、絶食中の口腔内環境を整えることが口腔内の細菌増加を抑え誤嚥性肺炎予防に有効とされている。周術期における適切な口腔ケアは、唾液の分泌促進、口腔機能の低下防止に重要である。
 経腸栄養開始に当たっては、まず患者の栄養状態の評価、必要栄養量の算出を行い、原疾患や病態に応じて栄養剤を選択する。経腸栄養剤は、組成の違いや対象となる疾患に応じて多くの種類があるため、特徴を十分把握した上で使用することで患者の早期回復につなげる。経腸栄養開始時投与量はoverfeedingに注意しながら決定する。経腸栄養開始後は、目的の投与量までスムーズに達成できるように経腸栄養投与による合併症の出現に注意が必要であり、栄養剤の嘔吐による誤嚥性肺炎や下痢の発生を最小限に抑えるための注意点について述べる。
 また、今回当院で食道がんの再建手術を行った患者で、手術直前に体成分分析装置Inbodyによる骨格筋量の測定を行った患者70名(男性65名、平均年齢66歳±8.0歳〈48-83〉・女性5名、平均年齢60歳±12.5歳〈47-77〉)における、術後食事開始までの期間を調査し、非高齢者群(65歳未満)と高齢者群(65歳以上)に分類し、骨格筋指数(以後SMI)との関係について調査した。その結果より、高齢者群において、SMIが低値であるほど、術後食事開始までの期間が長期化した(p<0.05)。また、高齢者群において、SMIの値とICU在室日数に負の相関関係が見られた(p<0.05)。このことから絶食期間の長期化がさらなる嚥下機能の低下を助長する可能性が示唆された。
 周術期の適正な栄養管理の重要性は言うまでもなく、術前から栄養状態の把握を行い、サルコペニアなどを有する周術期誤嚥ハイリスク患者の嚥下機能維持のためには、術前からの積極的な介入が必要である。高齢者の食べる機能を守るためには術前、周術期、術後を通し、栄養管理、摂食嚥下リハビリ、口腔ケアなど多職種の連携と継続的な看護が重要であると考える。