第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O2] 呼吸・循環

[O2-7] 心臓血管外科手術施行患者における術後体位変換に伴う循環動態破綻に関連したリスク因子の探索的検討に向けて

○佐々木 康之輔1、松井 憲子2 (1. 東北大学大学院医学系研究科心臓血管外科学、2. 東北大学病院)

Keywords:循環管理、リスクアセスメント

 ICUでは、無気肺や換気改善および酸素化能改善のため、廃用症候群予防のため、褥瘡予防のため、または苦痛緩和のために看護師は体位ドレナージを含む体位変換を頻繁に行っている。とくに、Early mobilizationが推奨されている昨今において、離床は理学療法士に限らず看護師が積極的に関与している。その早期離床の過程の中で、ときとして臨床現場では、仰臥位から左右側臥位へ体位変換を行った後、一過性に血圧や心拍出量の低下が生じる症例を経験的に認めているが、その頻度は不明な状況である。また、左右側臥位への体位変換に伴う循環動態の変動として、健常人を対象に左右側臥位時の心拍出量を心臓超音波検査または心臓MRI検査を用いて評価した我々の研究によると、両側臥位にて心拍出量の低下傾向を認めている。このことから、左右側臥位への体位変換に伴う血圧低下は、両側臥位で引き起こされる可能性があることが推察されるが、実臨床と合致しているかは定かではない。そこで今回、心臓血管外科手術施行患者を対象にICUで実施する術後体位変換に伴う循環動態破綻の発生頻度とそれに関連したリスク因子や循環動態の変化を後方視的に評価することを目的とした。心臓血管外科患者では、その高い手術侵襲性または心臓への直接的操作がおよぶことから、前述したイベントが発生しやすいのではないかと仮定した。2018年1月から2018年12月の期間で、A病院に入院し、冠動脈疾患・弁膜症疾患・大動脈疾患に対して心臓血管外科術を施行された18歳以上の患者を対象とした。手術は待機的手術および緊急手術の両方を含めた。除外基準は、18歳未満、ステントグラフト挿入施行患者、カテーテルを使用した低侵襲による治療患者、補助人工心臓装着患者、移植後患者、ICU入室後に体位変換を実施することなく死亡した患者とした。イベント発症は、仰臥位から左右側臥位への体位変換に伴う循環動態破綻(血圧低下・心拍出量低下)に対し、介入を要した場合と定義した。本研究は、倫理委員会の承認を得た後に行われた(承認番号:2019-1-313)。対象期間中、239名に対して心臓血管外科手術が施行され、その内、適格条件に合致する患者は156名であった。本適格症例に対して、イベント発症の有無を患者記録から調査し、発症の有無で2群に分類、比較検討の準備を進めている段階である。イベント発生に関連するリスク解析を実施することにより、左右側臥位への体位変換を行う際のリスクアセスメントに役立つ可能性があると考えられる。