第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O6] 早期リハビリテーション

[O6-4] 早期離床プロトコル導入による効果と実際

○萬代 嘉子1、木下 浩子1、金山 美紀1 (1. 大阪市立大学医学部附属病院 ICU)

Keywords:早期離床、プロトコル

【目的】早期離床によるICU在室期間の短縮や合併症の予防、せん妄予防などからICU入室48時間以内の離床が推奨される。当院ICUでは看護師の経験や知識による臨床判断で離床を行っていたが、統一した判断基準で行えるようプロトコルを作成・導入し、その効果を比較・検討した。【方法】当院ICUに3日以上在室した18歳以上の人工呼吸器装着患者で、プロトコル導入前2018年9~11月52症例、導入後2019年4~6月41症例の計93症例の1)ICU在室日数2)平均人工呼吸器装着時間(人工呼吸器非離脱症例はICU退室時間までを装着として算定)3)離床数 4)離床を行った症例群(離床群)の入室からの離床開始時間 5)離床当日・翌日のSOFAスコアの平均 6)離床開始基準の逸脱項目 7)離床の中止基準該当項目 8)有害事象 9)看護師の経験年数を後方視的にデータ収集、t検定(有意水準p<0.05)にて分析・比較した。離床の定義は端座位、立位、歩行とし、プロトコルは集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会によるエキスパートコンセンサスを基に作成した。当院の倫理委員会の承認を得て、データは個人名をコード化して収集し、院内のみの取り扱いとした。【結果】1)プロトコル導入前5.79日・後5.34日(p=0.63) 2)導入前87時間42分・後70時間12分(p=0.45) 3)導入前後ともに30例 4)導入前48時間54分・後34時間9分(p=0.23) 5)導入前における当日6.80翌日5.93、導入後における30例のうち1例でSOFAスコア算定できず、29例で当日5.97翌日4.79 6)導入前9項目に計25例、導入後13項目に計32例 7)導入前7項目に計17例、導入後11項目に計33例 8)導入前 再挿管1例、導入後 再挿管3例、心房細動1例 9)看護師経験年数は導入前10.64年、後11.88年(p=0.42)、当院ICU経験年数は導入前4.44、後4.80年(p=0.72)であった。【考察】1)2)4)はプロトコル導入後に短縮したが有意差はなかった。だが4)は導入後に目標の48時間以内を達成し、開始基準を毎日評価することで開始時期を逃さずに離床ができたと考える。一方で導入前の看護師の臨床判断を起点とした離床も有害事象数や内容からはプロトコルに劣らないアセスメントができていたことが考えられる。3)は開始基準が極端な離床数の制限にはならずむしろ増加しており、プロトコルにより離床を意識づけられたことが伺える。5)は導入前後ともに悪化に転じた傾向はなく、離床による全身状態への悪影響はなかったが、今回は長期的なSOFAスコアの推移や看護師の臨床判断とプロトコルでの比較ができず、今後、調査・検討が必要である。その他の効果として、離床の開始・中止基準ができたことで、特に「循環」「呼吸」「苦痛・疼痛」が詳細に評価されるようになった。看護記録からも離床時の開始・中止基準の該当や逸脱が明確になり、次に離床を行う際の情報となって安全・円滑な離床に繋がることが考えられる。看護師の経験年数による有意差がなく、経験や知識からの臨床判断とプロトコル導入の比較は困難であった。看護師の配置転換や人員定数削減などにより、今後は知識や経験からの一定した臨床判断が困難な環境となることが予測され、そのような状況ではプロトコルが有用と考える。【結論】プロトコルによってICU在室日数、人工呼吸器装着時間、離床開始時間の短縮はなく、導入前の知識や経験年数による臨床判断とプロトコルによる差は比較できなかったが、開始基準の逸脱や中止基準が明確となり、どの看護師でも離床開始時期を見逃さず安全に離床を進められる。