第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O7] 看護教育・看護倫理

[O7-5] 集中治療室で身体抑制減少にチャレンジした看護師の思考のプロセス

○松本 亜矢子1、中根 未沙紀1、横川 千尋1、辻 千芽1 (1. 金沢大学附属病院)

Keywords:集中治療室、身体抑制、思考

<目的>
集中治療室(Intensive Care Unit 以下ICU)で身体抑制減少にチャレンジした看護師にどのような思考の変化があったか、その思考の変化に至るまでのプロセスを明らかにすることを目的とした。
<方法>
半構成的面接法を用いた質的記述的研究である。調査期間は2019年5月から6月である。A病院ICUで身体抑制減少にチャレンジした2016年以前からICUに在籍している看護師15名を対象に、身体抑制減少にチャレンジしたことでの思考の変化に関する質問を行った。分析は木下の修正版グランテッド・セオリー・アプローチの手法を用いて行った。本研究は所属施設の医学倫理審査委員会の承認を得て実施した。
<結果>
看護師の思考の変化を明らかにする過程で、対象者が身体抑制減少に向けた取り組みを経て『患者へ最善の看護を提供するための方法を探求する』ことが見出せたため、このプロセスを分析テーマとした。分析結果から14個のカテゴリ(【】で示す)が生成された。【違和感を覚えながらも患者の生命の安全を守るために当たり前のようにしていた身体抑制】から始まり、取り組み当初は【身体抑制をなくすことはICUでは実現不可能】と感じていた。しかし、看護部の一員として【身体抑制をなくすことを達成するプレッシャー】を感じるため【抑制帯の代わりに傍で見守る自分】がいた。その過程で【直に伝わる苦痛や欲求から気づく身体抑制していた時の患者の気持ち】や【看護師同士の語りの積み重ねから生まれた患者の行動の意図を考えてみる気持ちの芽生え】があり、【患者の些細な仕草から考える看護の視点】が生まれた。【身体抑制なしで患者の生命の安全を守ることから生まれるジレンマと困難感】と【身体抑制に頼らず患者ケアを重ねることで生まれたチームの一体感と成果の実感】を何度も繰り返し感じながら、【目的ではなく身体抑制をなくすことの看護としての意味づけ】に至った。しかし、今も【余裕がない状況で露わになるジレンマと負担感】と【患者に向き合う中で得られる看護の充実感と育まれたチーム力】を感じながら【患者へ最善の看護を提供するための方法の探求】をするというプロセスを示していた。このプロセスの根底には【自己抜去されるのではないかという怖さ】が常にあった。
<考察>
患者へ最善の看護を提供するための方法を探求するプロセスにおいて、ICUで身体抑制減少にチャレンジした看護師には【身体抑制なしで患者の生命の安全を守ることから生まれるジレンマと困難感】と【切迫した状況で露わになるジレンマと負担感】の2つのジレンマが存在していた。特に後者は生命維持装置を使用する患者が入室するICUで生じる特徴的なジレンマである。しかし、看護の成果の実感や充実感を得る中で、これらのジレンマを乗り越えながら、看護ケアの手応えを感じ、身体抑制をしないことを目的ではなく看護として意味づけ、患者へ最善の看護を提供するための方法を探求していた。そのため、自ら行った看護ケアが成果に結びついたと実感したり看護の充実感を得ることができるように成果を共有する機会をもち、看護の専門性への追求を支援することが重要であると考える。また、看護の成果の実感や充実感と共に、チームの存在があった。チームの存在が看護の可能性や、やりがい、達成感を感じることにつながっており、また、看護師の思考の変化と共にチームとしての成長があり、これらは相互作用していた。ゆえに、看護師同士が成功体験や悩みを語り合い共有する機会をもつこと、医師との連携がうまくとれるよう調整することが重要であると考える。