第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O9] 鎮痛・麻酔

[O9-5] 三次救命救急センターICUにおける鎮痛・鎮静プロトコル導入のための看護師教育の評価

○梅原 和美1、山﨑 憂紀1、水野 奈美1、櫻谷 眞佐子1 (1. 大阪府立中河内救命救急センター)

Keywords:鎮痛・鎮静管理、看護師教育

【目的】患者の快適性を維持し能動性を確保することでPICS予防につなげることを目的とした鎮痛・鎮静プロトコル(以下プロトコルとする)を導入した。看護師主導の鎮痛・鎮静管理となるため、勉強会およびシステムの説明を行ったうえで導入し13例経験した。経験した症例から看護師の実践場面を振り返り看護師教育を評価する。【方法】2019年1月より約半年かけ鎮痛・鎮静・せん妄の評価方法、鎮静剤の特徴、せん妄のケア、鎮痛剤の特徴の勉強会およびプロトコルの説明を実施した。勉強会は稲垣らによる先行研究「クリティカルケア領域での鎮痛・鎮静管理における看護師の教育ニーズ」を参考にした。看護師が調整する頻度が高いと予想された鎮静薬に関する勉強会は全スタッフに実施したうえで、プロトコルチームで作成した簡易説明書を配布した。プロトコルを実施した13例の患者について、①鎮静評価②目標鎮静深度到達日数③疼痛評価④鎮痛管理の実際⑤せん妄評価⑥患者の能動性に関わるケア介入について評価した。本研究は対象施設倫理委員会に相当する機関の承認を得たうえで実施した。【結果】プロトコル導入例全例において鎮痛・鎮静・せん妄評価は実施されていた。目標鎮静深度までの到達期間は当日が46%、3日目が31%、2日目が7%であった。患者によっては目標鎮静深度に到達後に興奮状態を認めたが、鎮痛薬の追加やニードの充足で対応することで目標深度にコントロールできた。疼痛評価はCPOTが62%、NRSが23%、CPOTからNRSへ移行が15%であった。鎮痛薬の増量やボーラス投与はチューブ不快の聴取など主観的表現に応じて実施されており、CPOT評価で増減は行われていなかった。目標鎮静深度に到達後もCPOTでの評価が継続され主観的評価に移行できていない例を75%認めた。導入例について、せん妄の発症例はなかった。患者の能動性に対する看護師の行動としては①現状認識を促す②ニードの抽出③歯磨き・洗面・体位変換の実施を促す④端坐位訓練を中心に取り組んでいた。患者のニードの抽出に力量の差があり、日中は意思疎通困難と評価されていた患者が夜間の看護師の介入で状況判断ができマウスケアに安全に取り組めるまでADLが拡大できているケースもあった。【考察】鎮静に関連した勉強会を多く実施したことで、適切な鎮静管理を行うことができた。鎮痛に関しては詳細な表現を困難とする患者に対し主観的評価を行うことに消極的となっている可能性が考えられた。今後はNRSあるいはフェイススケールを指さしで使用できるツールを作成するなど、患者の主観的評価を助ける取り組みの導入が必要であると考えられた。ICU滞在中のせん妄発症は認めなかったが、今後は後方病棟へ移動後の発症状況についても評価する必要がある。患者の能動性の拡大に関する看護師の行動は認められているが、看護師の感性や経験により差が生じている。システムとして離床プログラムの導入を検討するとともに、カンファレンスや先輩看護師からのアドバイス、一緒にやってみるなどのOJTを用いて看護師の育成を図る必要がある。システムの充実と現任教育・リーダー会との連携を図り患者の能動性の拡大に努めることが今後の課題と考える。