第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(示説)

[P2] 鎮痛・鎮静、せん妄ケア

[P2-2] 評価ツール(RCSQ)導入による睡眠満足度(睡眠の質)の調査

福浦 麻里1、○加来 晴菜1 (1. 関西医科大学附属病院 GICU)

Keywords:RCSQ、プレセデックス、睡眠の質、ICU

Ⅰ.はじめに
A大学病院の総合集中治療室(以下GICU)では手術直後の患者が多いことから、睡眠調整が困難なため鎮静剤にはデクスメデトミジン塩酸塩(以下DEX)が使用されている。看護師は、DEX使用後に患者は入眠できていると感覚的に判断していたが、実際にはDEXを使用しても眠れなかったという患者の訴えもあった。そこで、患者の睡眠満足度はどの程度なのか、当院で不眠時に使用しているDEXは睡眠の質を改善できているのかに疑問を持ち、本調査を実施した。
Ⅱ.目的
患者の主観的評価による睡眠満足度(睡眠の質)を調査し、GICU手術後の患者のDEX使用患者と未使用患者の睡眠満足度の差を明らかにすること
Ⅲ.研究方法
期間:令和元年9月~11月
対象:手術後、抜管してGICUに入室した患者235名( DEX使用群:94名、DEX未使用群:102名、除外例該当:39名)
方法:1)評価ツールの導入
先行研究1で使用された、評価ツール(Richard‐Campbell Sleep Questionnaire)の和訳した専用用紙に患者IDなどを記入する欄を追記し使用した。評価ツールは5項目で構成されており、各項目が0~100のスケールを用いて評価するものである。患者自身がスケールに縦線を記入し、その縦線の位置を計測、5問の合計500点満点としてスコアリングした。
方法:2)DEX使用の有無による比較
データ収集方法:後ろ向き研究法
データ分析方法:DEX使用群と未使用群に分け、有意差があるか調査した。項目ごとの評価は実施せず5項目のトータルスコアを比較した。DEX使用群と未使用群の睡眠満足度には差がないと仮定し、等分散を仮定した2標本によるt検定を実施した(有意水準5%)。
Ⅳ.倫理的配慮
本研究は、看護部倫理委員会の承認を得て、患者が特定されないように留意し実施した。
Ⅴ.結果
・全体の睡眠満足度は48.2%(RCSQ測定値合計/人数)であった。
・t検定の結果、t値境界値:2.30、t値:0.598となり境界値よりも小さくなった。また、P両側値:0.57とα:0.05以上であっ 
 た。以上より2群のデータは等しいとなり、帰無仮説は棄却されず有意差は認められないという結果になった。
 よって、DEX使用群と未使用群の睡眠満足度には差がない。
・本調査により、患者の睡眠の質に関して看護師による感覚的評価が中心であったが、患者の主観的評価を得るこ 
 とができた。
Ⅵ.考察
夜間のDEX使用についてはPADISガイドライン2)で「睡眠を改善するために夜間にデクスメデトミジンを使用することに関して、推奨はしない」と記されている。今回の調査でもDEX使用群と未使用群で有意な差がなく、DEX使用による睡眠満足度の向上は認められなかった。これまで当施設において睡眠に対する患者の主観的評価は実施されておらず、看護師が感覚的に「眠れていた」と感じる評価とは異なる結果となった。
Ⅶ.結語
本調査により、今までは看護師が感覚的に評価していた患者の睡眠を、評価ツール(RCSQ)を使用することで、患者の主観的な評価を基に数値化することができた。DEX使用群と未使用群の睡眠満足度は差がないことが明らかになった。今後は看護師の感覚的評価のみでなく、患者の主観的評価を基礎として、ICUにおける睡眠の質確保に取り組んでいきたい。
引用・参考文献
1)Hiroaki Murata(2019),The Japanese version of the Richards-Campbell Sleep Questionnaire: Reliability and validity assessment, Nursing Open.2019;6:808-814
2)Society of Critical Care Medicine,日本集中治療医学会(2019)