第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(示説)

[P4] 家族看護、看護倫理、理論・概念

[P4-1] 患者のライフストーリーに関連の深い写真や物が医療者に与える影響

○布野 晴菜1、舩尾 梨名1、北別府 孝輔1 (1. 倉敷中央病院)

Keywords:ライフストーリー、写真、PICS予防、看護介入

【目的】
患者のライフストーリーに関連の深い写真や物が医療者に与える影響を明らかにする

【方法】
研究デザイン:前向き観察研究(量的研究)、研究対象:A病院ICU看護師(29名 )、介入内容:2日以上ICU滞在見込みの患者を対象に「患者のライフストーリーに関連の深い写真や物」を持参してほしいことを、研究チームが作成した用紙を用いて家族に説明を行うようICU看護師に依頼した。データ収集期間:2019年6月~11月、データ収集方法:介入開始前、介入開始6か月後にICU看護師を対象に11項目のアンケート調査を5件法(1:意識的に取り組めていない~5:意識的に取り組めている)で行った。データ分析:SPSS.ver20を用いてt検定を行った。

倫理的配慮:本研究は、A病院看護研究審査会の承認を得て実施している。原則として、本研究で得られた患者のデータは本研究の目的以外には使用しない。対象者のプライバシー保護に十分配慮し、登録されたデータは登録番号のみで識別し、個人を特定できる情報は記載しない。研究参加者は、原資料の閲覧によって知り得た対象者のプライバシーに関する情報を第三者に漏えいしない。また、本研究の参加諾否は自由意志であることを説明し、アンケートの回答時には同意欄へのチェックをもって同意とした。

【結果】
研究参加者は29名であった。分析の結果、【ICUダイアリーの実施】の平均点が1.7から2.8点(P=0.00)に上昇、【患者のライフストーリーを想像しながら看護実践を行えている】の平均点が2.5から3点(P=0.02)に上昇し、2つの項目に有意差がみられた。その他の項目では有意差はみられなかったが、【患者や家族とのコミュニケーションの頻度】で3.4点から3.5点、【鎮痛鎮静コントロール】で3.8点から3.9点、【家族との面会調整】で3.3点から3.4点、【その人らしさを尊重した目標を患者本人や家族と共有する機会をもつ】で2.6点から3点、と複数の項目で肯定的な変化が見られた。肯定的な変化が見られなかった項目としては、【患者のライフストーリーに関する情報を意図的に収集している頻度】3.2点から3.1点、【毎日のセルフケア】3.8点から3.7点、【毎日の離床】3.6点から3.6点、【多職種連携】3.5点から3.5点、【生活リズムや睡眠の調整】3.9点から3.8点であった。

【考察】
「患者のライフストーリーに関連の深い写真や物」を積極的に持参してもらうことで、写真や物から患者に興味を持ち、患者としてではなく“その人”として捉えることの一助になったのではないかと考える。結果として、写真や物が患者家族との会話のきっかけとなり、患者の退院後あるべき姿を想像した看護実践に繋がったと考える。これらにより、患者の目指すべきADLに向けた看護ケアやリハビリの思考が促進され、【患者のライフストーリーを想像しながら看護実践を行えている】が達成されたと考える。【ICUダイアリーの実施】については、患者の退院後の生活の再構築に向けた看護実践が必要であること、その為にメンタルヘルスにもアプローチする必要があることに意識が向いたため、ICUダイアリーという手段に繋がったのではないかと考える。「患者のライフストーリーに関連の深い写真や物」を持参してもらうための説明や活動を通して、ICU入室中の患者の前後のストーリーを意識しながら看護実践を行うという看護師の意識変容に繋がったと考える。

【結論】
「患者のライフストーリーに関連の深い写真や物」を積極的に持参してもらうことで、看護師が患者の退院後の生活を思考するという意識変容をもたらす可能性について示唆を得ることができた。