[P4-2] 延命治療の代理意思決定支援においてICU看護師が抱く困難と対処
キーワード:延命治療、代理意思決定支援、家族
Ⅰ.研究目的
A病院ICUにおける延命治療の代理意思決定支援に関して看護師が抱いている困難と対処を明らかにする。
Ⅱ.用語の定義
・延命治療…生命予後不良の患者に対して行われる生命を延長することを目的としたすべての治療1) 。
・代理意思決定…意識が無く自己決定できない患者に代わって患者の家族が生命や予後の生活に影響を及ぼしうるような治療の内容を決定することとする。治療内容の具体例は急変時や心肺停止時の対応、手術、人工呼吸器による呼吸管理・気管切開術・透析・人工心肺の実施や継続についてとする2)。
・家族…血縁、婚姻関係に問わず自身が家族であると認識し、(患者が意思決定出来ない状況において)代理意思決定に参加する成人とする2)。
Ⅲ.研究方法
研究デザイン:半構造化面接調査を用いた質的研究
研究期間:倫理審査承認日~2020年7月30日
研究場所:特定機能病院A ICU
研究対象:専門看護師、看護師長を除いた看護師6名
データ収集・分析方法:インタビューガイドを作成し、半構造化面接を行った。インタビュー内容を基に逐語録を作成しカテゴリー化した。
Ⅳ.倫理的配慮
本研究は秋田大学大学院医学系研究科・医学部倫理委員会の承認を得て行った。
Ⅴ.結果
面接内容を質的に分析した結果、106コード、46サブカテゴリーから、看護師が抱く困難に関しては【危機的状況にある家族との関わり】【患者の意思の不確かさ】【患者・家族へ共感するがゆえのジレンマ】【死に対する普遍的な問い】などの8カテゴリー、困難に対する対処に関しては【家族との関係性の確立】【家族の受容を促すための関わり】【患者・家族への意思確認】【心理的な防衛】などの8カテゴリーが明らかとなった。
Ⅵ.考察
ICU看護師は、重篤な患者とその家族に関わる際に、【危機的な状況にある家族との関わり】という困難に直面しながらも、【自由な面会への配慮】や【患者・家族支援のための情報収集】を行い、【家族との関係性の確立】を図っていた。また、代理意思決定支援を行ううえで【患者の意思の不確かさ】などの困難が生じるが、【患者・家族への意思確認】をすることで対処していた。動揺が大きい家族に対しては、【家族の受容を促すための関わり】などをしながら、患者にとっての最善を考えて家族が代理意思決定できるように支援しており、これらの対処は看護者の倫理綱領に基づくものであると考えられた。また、日々の関りの中で【患者・家族へ共感するがゆえのジレンマ】や【死に対する普遍的な問い】などの困難にも直面し、それ対して【心理的な防衛】をとっていたが、その他に具体的な対処行動が挙げられなかったことから、困難に対処しきれていないことが考えられた。ICU看護師は【みんなが納得した代理意思決定をするための関わり】を心掛けていたが、それと同時に【医療者間のすれ違い】などの困難も抱えていた。このような状況への解決策として、看護師個人ではなく、チームとして困難を解消していく必要があると考えられた。患者や家族の希望を治療方針に反映させることができるように、看護チームとして多職種に働きかけることが重要であると考えられた。
Ⅶ.結論
ICU看護師は危機的状況にある家族との関わりに困難を感じながらも、患者の最善を考えつつ家族の代理意思決定を支援していた。代理意思決定支援のなかで生じる困難に対し、看護チームとして対処していく必要性が示唆された。
Ⅷ.引用文献
1)清水玲子他:救急医療において延命治療の代理意思決定を行った家族の体験.関西国際大学研究紀要19,45-55.2018
2)石塚紀子他:救命救急領域における家族の代理意思決定時の思いと看護支援の実態.日本クリティカルケア看護学会誌,11(3),11-23.2015.
A病院ICUにおける延命治療の代理意思決定支援に関して看護師が抱いている困難と対処を明らかにする。
Ⅱ.用語の定義
・延命治療…生命予後不良の患者に対して行われる生命を延長することを目的としたすべての治療1) 。
・代理意思決定…意識が無く自己決定できない患者に代わって患者の家族が生命や予後の生活に影響を及ぼしうるような治療の内容を決定することとする。治療内容の具体例は急変時や心肺停止時の対応、手術、人工呼吸器による呼吸管理・気管切開術・透析・人工心肺の実施や継続についてとする2)。
・家族…血縁、婚姻関係に問わず自身が家族であると認識し、(患者が意思決定出来ない状況において)代理意思決定に参加する成人とする2)。
Ⅲ.研究方法
研究デザイン:半構造化面接調査を用いた質的研究
研究期間:倫理審査承認日~2020年7月30日
研究場所:特定機能病院A ICU
研究対象:専門看護師、看護師長を除いた看護師6名
データ収集・分析方法:インタビューガイドを作成し、半構造化面接を行った。インタビュー内容を基に逐語録を作成しカテゴリー化した。
Ⅳ.倫理的配慮
本研究は秋田大学大学院医学系研究科・医学部倫理委員会の承認を得て行った。
Ⅴ.結果
面接内容を質的に分析した結果、106コード、46サブカテゴリーから、看護師が抱く困難に関しては【危機的状況にある家族との関わり】【患者の意思の不確かさ】【患者・家族へ共感するがゆえのジレンマ】【死に対する普遍的な問い】などの8カテゴリー、困難に対する対処に関しては【家族との関係性の確立】【家族の受容を促すための関わり】【患者・家族への意思確認】【心理的な防衛】などの8カテゴリーが明らかとなった。
Ⅵ.考察
ICU看護師は、重篤な患者とその家族に関わる際に、【危機的な状況にある家族との関わり】という困難に直面しながらも、【自由な面会への配慮】や【患者・家族支援のための情報収集】を行い、【家族との関係性の確立】を図っていた。また、代理意思決定支援を行ううえで【患者の意思の不確かさ】などの困難が生じるが、【患者・家族への意思確認】をすることで対処していた。動揺が大きい家族に対しては、【家族の受容を促すための関わり】などをしながら、患者にとっての最善を考えて家族が代理意思決定できるように支援しており、これらの対処は看護者の倫理綱領に基づくものであると考えられた。また、日々の関りの中で【患者・家族へ共感するがゆえのジレンマ】や【死に対する普遍的な問い】などの困難にも直面し、それ対して【心理的な防衛】をとっていたが、その他に具体的な対処行動が挙げられなかったことから、困難に対処しきれていないことが考えられた。ICU看護師は【みんなが納得した代理意思決定をするための関わり】を心掛けていたが、それと同時に【医療者間のすれ違い】などの困難も抱えていた。このような状況への解決策として、看護師個人ではなく、チームとして困難を解消していく必要があると考えられた。患者や家族の希望を治療方針に反映させることができるように、看護チームとして多職種に働きかけることが重要であると考えられた。
Ⅶ.結論
ICU看護師は危機的状況にある家族との関わりに困難を感じながらも、患者の最善を考えつつ家族の代理意思決定を支援していた。代理意思決定支援のなかで生じる困難に対し、看護チームとして対処していく必要性が示唆された。
Ⅷ.引用文献
1)清水玲子他:救急医療において延命治療の代理意思決定を行った家族の体験.関西国際大学研究紀要19,45-55.2018
2)石塚紀子他:救命救急領域における家族の代理意思決定時の思いと看護支援の実態.日本クリティカルケア看護学会誌,11(3),11-23.2015.