第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD6] クリティカルケア領域における臨床研究の課題と挑戦

企画:山勢 博彰(山口大学)

[PD6-2] 臓器移植看護における研究と課題 ―教育研究職の立場から―

○谷水 名美1 (1. 関西医科大学看護学部)

Keywords:臓器移植看護、生体臓器移植

 日本における臓器移植の始まりは1956年の生体腎移植である。その後、腎臓や肝臓、心臓などの死体からの移植が行われ、治療が発展していった。1964年には生体腎移植、1989年には生体部分肝移植が初めて行われた。1997年10月には「臓器の移植に関する法律」が施行され、日本も欧米並みに脳死下臓器移植が行われると期待されたが、法律制定後の初の脳死下臓器提供は1年4か月後の1999年2月であった。2010年に同法の一部改定が行われ、家族の承諾で臓器提供が可能となった。しかしながら、心臓死からの臓器提供数は減少しており、心臓死と脳死を合わせた死体臓器提供数に変化はない。海外と比較すると死体臓器提供数の不足は現在の課題として変わらず続いている。不足する状況のために、日本では海外と異なり、生体からの移植が中心となっている現状がある。
 臓器移植医療が一般的な医療と異なるのは、患者と医療者の2者の関係性において成り立つものではなく、善意で臓器を提供するドナーの存在が必要不可欠という点にある。このようにドナーの意思に基づき成立するものであることから、個人、家族、社会が絡みあう、複雑で多様な倫理的問題が生じうる医療となっている。インフォームド・コンセントやそれに基づく意思決定に際し、様々な立場の葛藤が生じている医療現場において、周術期の身体的管理だけでなく、レシピエントやドナー、またその家族の権利擁護を行う職種の1つとして看護師がいる。
 移植医療に関する看護の視点からの研究は1990年代中盤から事例検討がみられ始め、2000年代に入ると周術期の身体的ケアや心理的ケア、患者教育などの実践的な研究に加え、倫理的視点では意思決定の問題やジレンマ状況に関する研究がみられている。移植医療に携わる看護師には危機に対処できる能力の必要性や役割、責任範疇の明確化が求められてきたことが背景にある。
 今回は、これまでに継続して行ってきた臓器移植看護に関する研究(主にはレシピエントや臓器移植にかかわる看護職を対象とした研究)をもとに、クリティカルケア領域における臨床研究の課題と今後への挑戦について報告したい。