[O1-02] 入退院を繰り返しながら療養する症候性心不全患者が抱く病気の不確かさと対処
キーワード:症候性心不全患者、病気の不確かさ、対処
【目的】高齢化が進む本邦において,心不全患者は増加の一途をたどることが危惧されている.症候性心不全は,増悪と軽快を繰り返しながら徐々に身体機能が悪化する経過をたどる(Lynn, 2001). その中で急性増悪による入退院を繰り返す患者には,自己管理を行っていたとしても徐々に低下していく身体機能と共に自己管理能力も制限され,様々な感情の狭間で揺れ動き,先の読めない状況が存在する(山下他,2011; Corcoran et al., 2013).病気に関連する様々な出来事の意味づけができないときに不確かさは生じるとされる (Mishel,1988) が,本邦においては,入退院を繰り返す症候性心不全患者がどのような不確かさを抱え,またどのように対処しているかについての知見は今のところ見当たらない.以上の背景より,本研究では入退院を繰り返しながら療養する心不全患者が抱く病気に対する不確かさと対処を明らかにすることを目的とした.
【方法】研究対象者は関東近郊の大学病院に外来通院し,心不全の急性増悪による入退院を繰り返しながら療養する症候性心不全患者とした.外来通院時に半構造化面接法を用いて「不確かさ」と「対処」に関するデータ収集を行い質的帰納的に分析した.
所属大学の倫理委員会,対象施設の臨床研究実施委員会の承認を得て実施した.研究への参加は,研究概要を読み参加者自身で協力意思を郵送にて返送することで自由意思を尊重し,いつでも辞退は可能で不利益を被らないことを説明し,書面にて同意を取得した.
【結果】対象者は6名で,平均年齢は71.5歳,全員が心不全ステージC,NYHAⅡ~Ⅲの症状を抱える高齢者であり,心不全加療目的の入院回数は平均4.7回であった.分析の結果,入退院を繰り返しながら療養する症候性心不全患者が抱く病気の不確かさは【心臓の状態を解釈できない】,【自分に何が起こっているのか把握できない】,【病気になった理由がわからない】,【心臓がどこまで耐えられるのかわからない】,【周囲の人との調和のとり方がうまく掴めない】,【病気に向き合っていけるのか気がかりである】,【病気の経過が予測できない】,【今後の生活の見通しをもつことができない】の8個のカテゴリであった.また,病気の不確かさへの対処は【これまでの経験から自分なりに工夫する】,【病気について自ら情報を得る】,【これからの生きる糧を思い描く】,【前向きな気持ちで病気と向かい合う】,【周囲との繋がりを頼りにする】,【気がかりな思いから意識をそらす】,【今自分ができることに目を向ける】,【現実に抗わずありのままに受け入れる】の8個のカテゴリであった.
【考察】患者が抱く病気に対する不確かさには,増悪と軽快を繰り返しながら徐々に身体機能が悪化していく先の読めない経過と症状に付随し,そこから日常生活における様々な制約や周囲のサポート環境,この先の見通しへと波紋のように広がりゆくという特徴がある.また対処には,不確かさを直接軽減し緩和しようとする対処,不確かさを抱きながら今の在りように折り合いをつけていく対処が特徴としてあった.不確かさと対処の関係性は一方向ではなく,患者は自分なりに対処していても入退院を繰り返し行きつ戻りつ揺れ動く心情の中で,これらの不確かさを繰り返し感じながら,自身の望む生活を紡ぎなおしつつ今の在りように折り合いをつける対処も相互に行っていると推察された.
【結論】患者が望む生活の質を保ち,自分らしく生きることを支える支援において,患者のもつ不確かさと対処に視座から寄り添い,気持ちが揺らぎやすい患者の背景を推し量りながら,生活を紡ぎなおしていく過程を医療チームで態勢を整え患者に伴走していく看護の必要性が示唆された.
【方法】研究対象者は関東近郊の大学病院に外来通院し,心不全の急性増悪による入退院を繰り返しながら療養する症候性心不全患者とした.外来通院時に半構造化面接法を用いて「不確かさ」と「対処」に関するデータ収集を行い質的帰納的に分析した.
所属大学の倫理委員会,対象施設の臨床研究実施委員会の承認を得て実施した.研究への参加は,研究概要を読み参加者自身で協力意思を郵送にて返送することで自由意思を尊重し,いつでも辞退は可能で不利益を被らないことを説明し,書面にて同意を取得した.
【結果】対象者は6名で,平均年齢は71.5歳,全員が心不全ステージC,NYHAⅡ~Ⅲの症状を抱える高齢者であり,心不全加療目的の入院回数は平均4.7回であった.分析の結果,入退院を繰り返しながら療養する症候性心不全患者が抱く病気の不確かさは【心臓の状態を解釈できない】,【自分に何が起こっているのか把握できない】,【病気になった理由がわからない】,【心臓がどこまで耐えられるのかわからない】,【周囲の人との調和のとり方がうまく掴めない】,【病気に向き合っていけるのか気がかりである】,【病気の経過が予測できない】,【今後の生活の見通しをもつことができない】の8個のカテゴリであった.また,病気の不確かさへの対処は【これまでの経験から自分なりに工夫する】,【病気について自ら情報を得る】,【これからの生きる糧を思い描く】,【前向きな気持ちで病気と向かい合う】,【周囲との繋がりを頼りにする】,【気がかりな思いから意識をそらす】,【今自分ができることに目を向ける】,【現実に抗わずありのままに受け入れる】の8個のカテゴリであった.
【考察】患者が抱く病気に対する不確かさには,増悪と軽快を繰り返しながら徐々に身体機能が悪化していく先の読めない経過と症状に付随し,そこから日常生活における様々な制約や周囲のサポート環境,この先の見通しへと波紋のように広がりゆくという特徴がある.また対処には,不確かさを直接軽減し緩和しようとする対処,不確かさを抱きながら今の在りように折り合いをつけていく対処が特徴としてあった.不確かさと対処の関係性は一方向ではなく,患者は自分なりに対処していても入退院を繰り返し行きつ戻りつ揺れ動く心情の中で,これらの不確かさを繰り返し感じながら,自身の望む生活を紡ぎなおしつつ今の在りように折り合いをつける対処も相互に行っていると推察された.
【結論】患者が望む生活の質を保ち,自分らしく生きることを支える支援において,患者のもつ不確かさと対処に視座から寄り添い,気持ちが揺らぎやすい患者の背景を推し量りながら,生活を紡ぎなおしていく過程を医療チームで態勢を整え患者に伴走していく看護の必要性が示唆された.