第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O1] 呼吸・循環管理

[O1-05] 植込型補助人工心臓装着患者の生活ー5事例の分析ー

○松岡 由起1、明石 惠子2 (1. 名古屋大学医学部附属病院 看護部、2. 名古屋市立大学大学院 看護学研究科)

Keywords:補助人工心臓、生活

【目的】重症心不全患者にとっての唯一の治療は心臓移植であり、多くの患者が補助人工心臓(Ventricular Assist Device:以下VAD)の助けを借りて待機期間を過ごしている。VADを装着した患者がどのように生活を送り、どのような思いを抱えているのかを理解することが患者一人一人に合わせた支援を考える一助になると考え、植込型VAD装着患者がどのような思いを抱えて生活しているのかを明らかにすることとした。
【方法】質的記述的研究デザインとし、研究参加者は心臓移植を前提として植込型VADを装着し、研究への同意が得られた外来通院中の成人患者5名とした。患者のVAD装着期間は1年1か月~5年2か月であった。調査期間は2020年10月~11月で、調査方法は診療録調査と半構造的面接とし、質的記述的分析を行った。本研究は研究者の所属施設および研究実施施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】分析の結果、17サブカテゴリから7カテゴリが形成された。【VADとともに生活している自分を受け入れている】は<VADとの生活を自然だと思う><VADとの生活に慣れてきた>の2サブカテゴリで形成され、患者にとってVADは自分の体の一部であり、VADとの生活は自然に任せて慣れるしかないと感じていた。【VAD装着による生活上の制限を我慢する】は<VAD装着によって生活行動が制限される><VAD装着によって行動範囲が狭くなったことを我慢する>の2サブカテゴリで形成され、VAD装着によって生活行動に制限が生じることを我慢するしかないと感じていた。【自分とVADを守るために周囲に気をつける】は<自分で自分の身を守らなければならない><常にVADのトラブルを防止するよう気をつける>の2サブカテゴリで形成され、VADのトラブルを防止するため常に周囲に気をつけて生活していた。【可能な範囲でVAD装着前と同じように過ごす】は<可能な範囲でVAD装着前の生活に近づきたい><VAD装着前後で生活は変わらないと思う><VADによる制限を意識せず過ごしたい>の3サブカテゴリで形成され、可能な範囲でVAD装着前と同じ生活を送ろうとしていた。【負担をかけている家族にできる範囲で貢献する】は<家族に負担をかけている><できる範囲で家族に貢献する>の2サブカテゴリで形成され、家族に支えられているが、常に負担をかけていると感じていた。【体重が増えないように食事と運動に注意する】は<体重と体力を維持するために運動する><体重が増えないように食事制限をする><体重管理に気をつける>の3サブカテゴリで形成され、心臓移植に備えて食事と運動に気を付けて生活していた。【期待と不安のなかでVADに頼って心臓移植を待つ】は<VADに頼って生きる><VAD装着に伴う合併症が不安である><生への期待と不安を持ちながら心臓移植を待つ>の3サブカテゴリで形成され、VAD装着に伴う合併症の不安を抱えながら心臓移植に期待と不安を抱いて生活していた。
【考察】植込型VAD装着患者は、VADとともに生活している自分を受け入れている一方で、VADによる生活上の制限を我慢していた。また、家族に対して遠慮する気持ちを持っていた。さらに、良い状態で心臓移植を受けるために食事制限と運動により体重を管理していた。看護師は、植込型VAD装着患者は常に我慢しながら生活していることを理解した上で、患者を支えていくことが重要である。また、患者が日々努力していることを認め、患者の生活に即した具体的な支援を行うことが求められる。
【結論】植込型VAD装着患者がどのような思いを抱えて生活しているのかを分析した結果、7カテゴリが形成された。看護師には患者一人一人の背景を深く理解した上で、患者の生活に即した継続した支援が求められる。