第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O11] 臨床判断

[O11-01] CCU入室中の気管挿管患者に対する身体拘束をしない看護師の臨床判断

○高橋 菜々美1、髙橋 祥子1 (1. 大阪労災病院 看護部)

Keywords:気管挿管患者、身体拘束、臨床判断

【目的】A病院CCUでは「身体拘束予防ガイドライン(日本看護倫理学会 2015)」等を参考にアセスメント用紙を作成、それを基にカンファレンスを実施しその結果身体拘束実施の件数は減少したが、看護師からは「自己抜管された時に責任がとれない」等の意見が出たため、看護師が過度の不安やストレスが緩和され安全に身体拘束をしない選択が出来る必要があると考えた。看護師が身体拘束をしないアセスメントや思考を明らかにすることで、身体拘束を減らすための方法の検討等に活用でき、不必要な身体拘束を減らすことに繋がるのではないかと思われた。そこで、本研究では、CCU入室中の気管挿管患者に身体拘束をしなかった看護師を対象とし、その臨床判断を明らかにすることを目的とした。
【方法】A病院CCU所属の看護師20名を対象に2020年2月~3月に実施した。気管挿管中の患者を受け持った時に、身体拘束をする必要がないと判断する状況とその理由について半構成面接調査法を行った。インタビューは1人1回、30分で実施し、質的記述的に分析を行った。インタビュー内容をもとに逐語録を作成し、目的に合致した内容についてコード化した。類似したコードを集めて抽象化し、サブカテゴリー化、さらにカテゴリー化、コアカテゴリー化をした。
 倫理的配慮として、A病院の看護研究委員会で倫理審査を得てから実施。インタビューは個室で行い、得られたデータは対象者が特定されないように暗号化し、鍵のかかる所へUSBを保管した。利益相反はない。
【結果】研究参加者は20名であり、研究参加者のインタビューから274コードが抽出され、47サブカテゴリー、10カテゴリー、5コアカテゴリーが分類された。コアカテゴリーを《》、カテゴリーを【】、サブカテゴリー〔〕で示す。今回は下記コアカテゴリーについて述べる。《業務の状況》は135コードを抽出し、28サブカテゴリー、3カテゴリー、【見守りが出来る人がいれば拘束は不要】等が抽出された。《意識レベル・認知力》は62コードを抽出し、3サブカテゴリー、1カテゴリー【動かなければ拘束は不要】等が抽出された。
【考察】《業務の状況》の【見守りが出来る人がいれば拘束は不要】では〔どの勤務帯でも見守り出来るなら拘束は不要〕が抽出された。柳澤は自己抜管は通常業務に加え入院の受け入れ対応が重なる等看護師の目が患者から離れた際に起こっており、看護師が忙しさを感じる時の自己抜管のリスクの高さを示している。本カテゴリーでは看護師は患者から目が離れることがなければ、身体拘束をしなくても自己抜管を防ぐことができると判断していたと考えられる。《意識レベル・認知力》の【動かなければ拘束は不要】では〔従命行動がとれるなら拘束は不要〕が抽出され、看護師は従命動作がとれる認知力であれば身体拘束は要らないと判断していた。しかし栗原らは、危険行動がないため拘束を解除したところ自己抜去となった事例があったと述べている。また、栗原らは自己抜去の要因分析を多角的な視点で行っており、このことから本研究では【動かなければ拘束は不要】というカテゴリーが抽出されたが、多角的に自己抜去のリスクをアセスメントする必要性があると考えられる。
【結論】1.《業務の状況》においては、カテゴリー数は3個【見守りが出来るなら拘束は不要】等と、《意識レベル・認知力》においては【動かなければ拘束は不要】が抽出された。2.勤務帯や業務状況に関わらず見守りができるなら身体拘束は不要との結果から、不必要な身体拘束を減らすには看護師の人員配置や業務調整について検討する必要があると考える。