第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O11] 臨床判断

[O11-02] クリティカルケア領域における身体拘束を必要最小限にするための実態と取り組みに関する文献検討

○笹倉 祐輔1 (1. 東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部)

Keywords:身体拘束、physical restraint、クリティカルケア

【背景(目的)】クリティカルア領域では患者の生命が優先され身体拘束が必要となるが、その有用性と安全性を示す明確なエビデンスはなく、身体拘束を最小限にしていくためには多くの困難がある。よって、その活動の実態や取り組みについて調査し、身体拘束を必要最小限にするための対策を明らかにすることを目的とする。
【方法および分析の概要】文献検索は、国内文献は医学中央雑誌Web版(ver.5)を用い、検索語は「身体拘束」 「身体抑制」 「抑制帯」 「拘束具」 「physical restraint」 「クリティカルケア」 「クリティカルケア看護」「ICU」 「急性期病院」 「急性期」 「intensive care unit」 「critical care」 「acute care」 「ccu」「熱傷ユニット」 「stroke care unit」とし、海外文献はPubMed、CINAHL、Cochrane Libraryを用い、検索語は「physical restraint」 「critical care/acute care」 「acute phase/acute stage/acute period」 「ICU/CCU/coronary care unit」に設定した。対象の年代は、国内においてICUにおける身体拘束(抑制)ガイドライン(日本集中治療医学会看護部会,2010)が発表された2010年からここ最近の10年間とした。得られた文献について記述内容を抽出しながら要約し活動の実態や取り組み、その結果による影響や要因に着目し、上記ガイドラインの身体拘束(抑制)判断基準フローチャートの判断基準における患者アセスメント、抑制以外の対策を参考に整理・統合した。  
 倫理的配慮は、著者の意向に配慮しながら論旨を尊重し、データ分析はクリティカルケア看護学領域の研究者の協力のもと適正に実施し、そのうえで研究結果の信頼性の確保に努めた。
【結果】文献検索の結果、国内が5件、海外が8件の13文献を対象とした。分析した結果、身体拘束の要因となる患者アセスメント、身体拘束以外の対策としてそれぞれ身体的、心理・社会的、組織、倫理的問題へのアプローチとしてデータを統合した。患者アセスメントに関する文献は6件で、予測できない変化していく動きの見極めや、不穏、せん妄などの行動と病態変化の双方から身体拘束の判断を行なっていた。身体的アプローチに関する文献は5件で、患者が現状を理解することを促すために、頻繁なコミュニケーションやオリエンテーションを繰り返す取り組みや予防的な薬剤投与による苦痛への対応がなされていた。心理・社会的アプローチに関する文献は6件で、患者と家族の関係性を保つことや、面会時に身体拘束を解除することで家族の不安や恐怖につながらないよう配慮することも述べられていた。組織へのアプローチに関する文献は10件で、業務調整や専門的な看護師の関わり、TeamSTEPPS、身体拘束管理バンドルなど組織全体として取り組みが実施されていた。倫理的問題に関する文献は5件で、患者を擁護したい思いを抱きながらもこの状況に倫理的ジレンマを抱えていた。
【結論】クリティカルケア領域における身体拘束を必要最小限にするための取り組みには、患者アセスメント、身体的、心理・社会的、組織、倫理的問題のそれぞれへのケアのアプローチが必要であることが明らかとなった。しかし、サンプル数の少なさや研究デザインの困難さから、一般化可能な取り組みについては認められなかった。
 今後、身体拘束を必要最小限にするための取り組みについてエビデンスの蓄積と、身体拘束が抱える倫理的問題への対策が必要であることが示唆された。