第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O12] 看護教育

[O12-04] 退院後の患者との面接を経験したICU看護師のPICS予防に対する意識調査

○梅原 和美1、山﨑 憂紀1、水野 奈美1、喜田 雅彦2、冨岡 小百合1 (1. 大阪府立中河内救命救急センタ― 看護部、2. 大阪府立大学院 看護学研究科)

Keywords:PICS予防、看護師教育、退院後の患者ケア

【背景(目的)】当センターのICUでは、PICS予防を目的とし、十分な鎮痛・至適鎮静深度の維持・早期離床・生活リズムの確立のための看護実践に努めている。令和2年5月より重症新型コロナウイルス感染症患者に対する退院後の外来フォローが開始となった。患者のICUでの体験や看護ケアに対する感想、退院後の日常生活について知ることは、PICS予防の理解促進につながると考え、「患者インタビュー」と称し、外来フォロー時にICU看護師と患者との面接の機会を調整した。患者との面接を経験したICU看護師がどのような意識をもったのか明らかにすることを目的に質問紙調査を行った。
【方法および分析の概要】外来フォロー時に患者との面接を行ったICU看護師を対象に自記式質問紙調査を行った。質問項目は、①実施した件数、②要した時間、③どのような経験となったかとその理由、④大変だったこととその理由、⑤感想とした。本調査は所属施設の倫理委員会に相当する機関の承認を得た上で実施し、対象者には調査について口頭および文書で説明し同意を得た。自記式質問紙は無記名とし個人が特定されないように配慮した。
【結果/経過】対象となったICU看護師は7名で回収率は100%であった。①患者との面接を実施した件数は1~8件/人、1日当たりに対応した件数は1~3件、②患者との面接に要した時間は10~60分/件であった。③すべての看護師が「良い経験」となったと返答した。理由として「挿管・鎮静中の患者の気持ちを知ることができた」「自宅退院後の生活状況や社会復帰の状況を聞けたことでICU看護を振り返る機会になった」「ICUでの記憶がある患者と全く覚えていない患者がいて面白いなと思った」「筋力低下を感じている患者が多くベッド上リハビリの早期介入が大事だと思えた」「退院後の患者の様子が知れてより退院後の生活を意識して関われるようになった」などが挙げられた。④大変だったことに関しては「マンパワー不足」が4件、「不確かな拘束時間」が4件、「情報収集」が2件、「記録」が1件、「その他」が1件で「精神的負担」は0件であった。理由として「患者の来院時間もまちまちで業務調整がしづらい」「患者によっては様々な思いを話してくださりその思いのまま記録に残したかったので記録に時間がかかった」「その日によって受け持ちやリーダーの役割となっていることもありインタビューに行けなかったことは残念」などが挙げられた。⑤感想として「良くなった患者・家族の姿を写真に収めスタッフと共有できたらと思った」「もっとインタビューを担当したい」などがあった。
【結論】退院後の患者が語るICUでの体験や退院後の日常生活を知ることで、面接したICU看護師はICUでの看護を再考する機会を得たと考えられた。対応した患者の多くが社会復帰しており、日頃の看護ケアの成果を感じ励みにするとともに、日常生活や社会復帰に着目し、PICSにおける身体機能障害の予防に対する意識を高めることに繋がったと考えられた。マンパワー不足や面接の時間調整に難渋する面がありながらも、患者との面接を「良い経験」としていることからも、ICU看護師が退院後の患者と関わる機会は重要であると考える。対応できるICU看護師の育成と業務調整を行いながら負担なく継続する方法を確立することに加え、患者のICUでの体験が及ぼす精神面への影響についてさらに重要性を認識し、PICSにおける認知機能障害・精神機能障害予防に対する意識を高めていく必要があり今後の課題と考える。