第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O4] 家族看護

[O4-01] 集中治療室で生命危機を脱した患者の退室に不安がある家族への情報提供の看護実践

○古知 里美1、北村 愛子2、大江 理英2 (1. 静岡県立総合病院 看護部、2. 大阪府立大学 看護学研究科)

Keywords:情報提供、不安がある家族、退室、集中治療室

【目的】患者の集中治療室(以下ICUと記す)の退室は環境やケアの提供者の変化から不安が生じるとされる。また、ICU退室時の患者の病状は家族と医療者で相違があり、そのずれを埋める情報提供の必要性が示唆されている。不安がある場合、現状を正しく認識することが難しく介入の必要性は高いが、ICUの退室においてどのような情報提供の看護実践が行われているかは明らかでない。そこで、ICUで生命危機を脱した患者の退室に不安がある家族への情報提供の看護実践を明らかにすることを目的とした。
【方法】研究デザイン:質的記述的研究。研究参加者:ICUで生命危機を脱した患者の退室に不安があると判断した家族に情報を提供した経験がある集中治療に携わる看護師のクリニカルラダーレベルⅢ以上の看護師。データ収集期間:2020年8月~2020年11月。データ収集方法:半構造化面接法。分析方法:インタビューから逐語録を作成し、ICUの退室に不安がある家族への情報提供に際する看護師のアセスメント、ケアと評価を含む看護実践を表現している内容を抽出してコード化し、意味が類似しているコードをまとめてサブカテゴリ化、カテゴリ化した。倫理的配慮:研究参加は自由意思であり協力の諾否により研究参加者が不利益を被らないこと、匿名性の遵守およびデータの取り扱いと管理について書面と口頭で説明し同意を得た。所属組織の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】研究参加者は4施設のICU看護師5名。ICUで生命危機を脱した患者の退室に不安がある家族への情報提供の看護実践は、≪情報を受け止める力量を判断する≫、≪家族が不在時の患者が回復している様子を伝える≫、≪患者の現状を視覚的に示し理解を促す≫、≪退室に伴う変化を予告し家族の準備性を高める≫、≪退室後の情報は時期と内容を見極めて伝える≫、≪退室後のケアの継続性を保証する≫、≪情報を焦点化し簡潔に伝える≫、≪退室説明後の家族の理解度を評価する≫の8カテゴリ、28サブカテゴリ、99コードが明らかになった。
【考察】≪情報を受け止める力量を判断する≫は、家族の現状認識から不安の程度を捉え、情報を受け止める力量をアセスメントし、家族の心理的危機を回避していると考えられた。
 ≪家族が不在時の患者が回復している様子を伝える≫では、家族が短い面会時間で患者の回復を理解することは容易ではないため、患者の変化がわかりやすい出来事を伝え、モニターや文章を用いて≪患者の現状を視覚的に示し理解を促す≫ことや、内容を短く区切って伝えるなど≪情報を焦点化し簡潔に伝える≫ことで情報処理を容易にし、現実認知を促していると考える。また、≪退室に伴う変化を予告し家族の準備性を高める≫ことで退室に関する漠然性を減らし、≪退室後の情報は時期と内容を見極めて伝える≫ことで家族の対処能力に応じた情報提供を行い心理的危機を回避し、新たな環境に適応できるよう支援していると考えられた。さらに、≪退室後のケアの継続性を保証する≫ことで家族に安心を与え、療養の場の移行を乗り越えられる様に介入していると考えられた。情報提供の評価では、≪退室説明後の家族の理解度を評価する≫ことで情報提供のあり様を振り返っているものと考えられた。
【結論】ICUで生命危機を脱した患者の退室に不安がある家族への情報提供の看護実践は、家族の心理的危機回避を行いつつ対処能力を高め、移行を乗り越えられる様に援助する看護実践と考える。今後は本研究結果を退室に伴う家族の不安に対するICUでのカンファレンスや教育活動に活かしていく必要がある。