第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O4] 家族看護

[O4-02] 救命救急の場でポストクリティカル期へ移行する患者の家族に対する支援と看護師が抱く困難感

○新井 希理1、中山 美由紀2 (1. 宇治徳洲会病院 看護部、2. 大阪府立大学大学院 看護学研究科)

Keywords:家族、移行、クリティカル期、ポストクリティカル期、集中治療室

【目的】救命救急の場で、クリティカル期からポストクリティカル期へ移行する患者の家族に対する支援と看護師が抱く困難感を明らかにする。
【方法】研究デザイン:質的記述的研究。研究参加者:救急搬送された患者が入室する集中治療室の臨床経験3年以上の看護師7名。研究方法:1人1回30分程度の半構成的面接を行った。分析方法:面接内容から逐語録を作成し、調査内容を表現している記述をコード化し、抽象化してカテゴリーを作成した。倫理的配慮:大阪府立大学大学院看護学研究科研究倫理委員会と研究協力施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】研究参加者の看護師経験年数は平均8.57±10.0年、集中治療室での経験年数は平均5.42±4.47年であった。必要な支援は、【患者が集中治療室に入室した直後から、患者の移行を見据えて家族と関わる】【関わりの第一歩として、関係性構築のためにまずは家族の側にいて思いの表出を促す】【家族の立場に立って心情を読み取り、必要な支援を考えて実施する】【患者の病状の推移を家族がどのように捉えているのかを確認して、現状把握への支援を行う】【一般病棟への退室に向けた準備をする】【療養上の課題を推定して、退院後の生活を見据えた関わりを行う】【退院後の生活の家族の意向を確認し、退院支援部門と連携する】【移行において支援が必要な家族への関わりを充実できるよう体制を整える】【家族の現状から、カンファレンスでよりよい関わりを検討する】の9カテゴリーに抽象化された。看護師が抱く困難感は、【患者が生命の危機を離脱しても、その変化に追いつかない家族や現状をどのように捉えているか分からない家族を目の前に、戸惑う】【患者が集中治療室入室中に、家族と継続的に関わる時間の確保が難しい】【家族と医療者で今後の治療や療養生活への認識が異なる状況に困る】【生命の危機を離脱しても、入院前の状態までは戻らない患者の家族にどのように関わるか悩む】【患者・家族の関係性、生活に関する内容の把握や今後の支援の方向づけに困る】【一般病棟に家族への関わりを引き継ぐのが難しく、家族にどのような関わりが継続されているか分からない】【家族を含めた退院後の生活をイメージした支援を十分に実施することが難しい】【マンパワーの不足や経験年数により、家族と十分に関わることが難しい】の8カテゴリーに抽象化された。
【考察】看護師は、患者がクリティカル期の段階から移行に備えて、家族と関わったり、患者が退室する際の家族の心情を予測して、関わることが必要だと捉えていた。
 しかし、患者がポストクリティカル期へ移行しても、家族が「不安やパニック」を生じたりすることで【患者が生命の危機を離脱しても、その変化に追いつかない家族や現状をどのように捉えているか分からない家族を目の前に、戸惑う】という困難感や患者の療養場所が変わり、【一般病棟に家族への関わりを引き継ぐのが難しく、家族にどのような関わりが継続されているか分からない】という困難感を抱いていたと考える。
【結論】救命救急の場で、クリティカル期からポストクリティカル期へ移行する患者の家族に対する支援は、9カテゴリー、看護師が抱く困難感は、8カテゴリーで構成された。必要だと捉えた支援に対する、困難感を軽減させることで、看護師はクリティカル期からポストクリティカル期へ移行する患者の家族への支援に積極的に取り組むことができると考える。患者の移行を促進するためには、家族が移行を前向きに捉えることが必要であることから、集中治療室において、移行する患者の家族に対する支援を充実することは、患者の移行の促進に寄与すると考える。