第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題

[O4] 家族看護

[O4-03] 集中治療室での生命危機状態にある乳児の侵襲的治療についての倫理調整

○花山 昌浩1、小川 加織1 (1. 川崎医科大学附属病院 看護部)

Keywords:倫理調整、意思決定支援、家族看護

【背景(目的)】集中治療室で生命危機状態にある乳児の治療方針を選択する際に実施した家族への意思決定支援について振りかえる。
【方法および分析の概要】診療記録をもとに看護実践内容を振り返り、患者の状態や家族の言動、医療者との関わりについて時系列に文章化して意思決定支援に関する項目をまとめた。また、本事例を発表するに際し、ご家族への同意を得た上で川崎医科大学・同附属病院の倫理委員会の承認を得た(承認番号5158-00)。
【結果/経過】C氏、4ヵ月女児。心停止で発見。ドクターヘリスタッフが接触後挿管と昇圧剤の投与を実施後蘇生し、A病院搬送後に集中治療室へ入室。キーパーソンは母親。病日3日目に聴性脳幹反応検査を実施して脳波は平坦。翌日主治医から両親に対して意識が改善することが困難であること、人工呼吸器の離脱が困難であることを説明。病日5日目に両親から主治医に気管切開術をはじめとした現状以上の侵襲的治療の差し控えの申し出があった。申し出を受けて、病棟内カンファレンスを実施した際に主治医より、昇圧剤が中止できるまで全身状態は安定してきているため、今後小児科一般病棟に転棟する可能性も考えると気管切開術は必要な処置になるとの意見があった。以上のことより、家族の申し出と医療者間において倫理的ジレンマが生じていると考えた。そのため、自らの意思が表出することができないC氏の今後の治療方針について関係者間での合意形成を図る必要があった。まず、母の心情を確認するために、連日面会に来ていた母と面談の機会を設け、現在の心情や侵襲的治療差し控えの判断に至った経緯について確認した。母は、暗い表情で「家族で決めたことなので」というばかりで具体的な内容までは発言しなかった。そこでC氏の今後の治療方針について再度合意形成を図ることを目的に両親、祖父母、医師、看護師で話し合いの場を設けた。医師より、気管切開を含めた治療方針、実施した場合と実施しない場合の予後について説明を実施。両親はICの内容から再度侵襲的治療について拒否の姿勢を示し、その背景として祖母の意向が強く反映されていることが明らかとなった。祖母の意向が、キーパーソンである母親の意向に強く影響を与えている可能性を考慮したため、両親と医療者で話し合いの場を設けた。前回の説明に加えて使用する社会資源や小児科病棟に転棟することで両親がC氏と関わることのできる情報を提示した。また、院内の倫理コンサルテーションチームに事例について相談を行い、両親が気管切開の治療を選択した場合と選択しなかった場合の対応をそれぞれ協議した。この際、臨床心理士より両親が治療方針について充分理解できており、代理意思決定者として患者の推定意思を限りなく汲んだ意思決定ができる状況であるという情報を共有した。結果的に両親と医療者でC氏の状況と今後の治療方針について説明し、両親は気管切開を実施しない治療方針を希望した。C氏は挿管チューブを挿入した状態で病日34日に小児科病棟に転棟となった。
【結論】本症例のように突発的な出来事に巻き込まれた代理意思決定者が、乳児の意思を汲んだ意思決定を行うことは、非常に困難である。そのため、医療者は一方向的な支援を提案するのではなく、多職種で協働して多角的な視点から家族に対する支援のあり方を検討して、家族が選択できる機会を提供する必要がある。さらに、代理意思決定者が意思決定するための環境を整えることに並行して、医療者、家族間において最善策を探し続けるために協議する場を調整することが意思決定の正当性を確保する手段に繋がると考える。