[O5-02] 集中治療室における終末期医療の移行に関わる看護師の困難感
ー医師との関わりに焦点をあててー
Keywords:ICU、終末期医療、移行、医師との関わり
【目的】集中治療室(ICU)は、救命の場であり積極的な治療が優先されるが、終末期に向かうケースもある。2014年に3学会の定義が出され、これまでのガイドラインと大きく異なることは、終末期への移行期にはチームで関わるということである。本研究者は、2019年にICUにおける終末期医療への移行に関わる看護師の困難感の実態調査を行い、その概要を報告した。その中で、医師との関わりについて困難感を抱く看護師が多くいたが、しかし、何らかの対処を行いながら、医師と協働している様子が伺えた。そこで本発表は、終末期への移行において看護師が医師と関わる上での困難感に焦点をあて、対処方法についても明らかにする。
【方法】本研究は、質問紙調査法を用いた量的記述的研究である。関東地方県内の2次救急、3次救急のあるICUが6床以上ある病院、合計170施設で、対象者は、ICUに勤務する看護師長1名と看護師4名(ICU経験年数3年目以上、かつリーダー又はプリセプター経験がある)合計850名とした。調査期間は、2019年7月~8月である。調査内容は、先行研究と研究者の臨床経験を基に、自作の無記名自記式質問紙を作成した。その内容は、①対象者の属性、②ICUでの看取りの経験と困難感の有無と内容、③ICUにおける終末期医療への移行に関する経験の有無と終末期医療への関心の程度、④終末期への移行に関わる医師との関係についてである。このうち本研究では、③④のうち終末期への移行に関わる医師との関係に関する困難感と対処方法に関する回答から数値的に関連(χ2検定)をみるとともに自由記述の内容分析を行い、カテゴリーを抽出した。
本研究は、神奈川県立保健福祉大学研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。
【結果】回収数 209件、有効回答数206件(有効回答率24.2%)であった。終末期医療の移行に対して医師との関係性について調査した結果、163人(84.1%)の看護師がジレンマや困難感があると回答した。また、看護師のジレンマや困難感の有無との関連(χ2検定 有意水準5%)では、「終末期医療への判断(p=0.032)」「医師との関係性(p=0.001)」「終末期医療の移行判断の参画希望(p=0.017)」が認められ、つまり、困難感のある看護師は、終末期医療への判断に関わることで医師との関係に困難を感じるが、しかし、移行への判断に参画希望を持っている者が多いということが言えた。医師との関係に関する自由記載の内容分析では、<医療者間の方針のすり合わせ困難><医師が看護師の意見に耳を傾けない><医師と患者家族との狭間に立つ>という3つのカテゴリーが抽出された。また、対処方法に関する自由記載の内容分析では、<話し合う>、<医師と家族の橋渡しとなるようにかかわる><あきらめる>という3つのカテゴリーが挙げられた。<話し合う>のカテゴリーはさらに3つのサブカテゴリーからなり、それらは[看護師の視点をもって医師と看護師間で話し合う][医療者間で同じ方向を向くまで根気よく話し合う][看護師間でチームを作って話し合う]であった。
【考察】ICUの多くの看護師は、終末期医療の移行において医師との関係で困難感を感じていた。それは従来であれば、医師の方針や決定に従った役割、又はケア方針でよかったことが、ガイドラインが出されて、チームでかかわることが必要になったことも関係していると言える。そして、患者家族の思いを汲み取る看護師の立場であるからこそ、終末期医療の移行の判断に参画すべきと考え、医師と患者家族の狭間に立つという困難感を感じていると推察される。本研究において明らかになった対処方法のうち<あきらめる>を除く2つのカテゴリーは、今後のケアの指針になるものと考える。
【方法】本研究は、質問紙調査法を用いた量的記述的研究である。関東地方県内の2次救急、3次救急のあるICUが6床以上ある病院、合計170施設で、対象者は、ICUに勤務する看護師長1名と看護師4名(ICU経験年数3年目以上、かつリーダー又はプリセプター経験がある)合計850名とした。調査期間は、2019年7月~8月である。調査内容は、先行研究と研究者の臨床経験を基に、自作の無記名自記式質問紙を作成した。その内容は、①対象者の属性、②ICUでの看取りの経験と困難感の有無と内容、③ICUにおける終末期医療への移行に関する経験の有無と終末期医療への関心の程度、④終末期への移行に関わる医師との関係についてである。このうち本研究では、③④のうち終末期への移行に関わる医師との関係に関する困難感と対処方法に関する回答から数値的に関連(χ2検定)をみるとともに自由記述の内容分析を行い、カテゴリーを抽出した。
本研究は、神奈川県立保健福祉大学研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。
【結果】回収数 209件、有効回答数206件(有効回答率24.2%)であった。終末期医療の移行に対して医師との関係性について調査した結果、163人(84.1%)の看護師がジレンマや困難感があると回答した。また、看護師のジレンマや困難感の有無との関連(χ2検定 有意水準5%)では、「終末期医療への判断(p=0.032)」「医師との関係性(p=0.001)」「終末期医療の移行判断の参画希望(p=0.017)」が認められ、つまり、困難感のある看護師は、終末期医療への判断に関わることで医師との関係に困難を感じるが、しかし、移行への判断に参画希望を持っている者が多いということが言えた。医師との関係に関する自由記載の内容分析では、<医療者間の方針のすり合わせ困難><医師が看護師の意見に耳を傾けない><医師と患者家族との狭間に立つ>という3つのカテゴリーが抽出された。また、対処方法に関する自由記載の内容分析では、<話し合う>、<医師と家族の橋渡しとなるようにかかわる><あきらめる>という3つのカテゴリーが挙げられた。<話し合う>のカテゴリーはさらに3つのサブカテゴリーからなり、それらは[看護師の視点をもって医師と看護師間で話し合う][医療者間で同じ方向を向くまで根気よく話し合う][看護師間でチームを作って話し合う]であった。
【考察】ICUの多くの看護師は、終末期医療の移行において医師との関係で困難感を感じていた。それは従来であれば、医師の方針や決定に従った役割、又はケア方針でよかったことが、ガイドラインが出されて、チームでかかわることが必要になったことも関係していると言える。そして、患者家族の思いを汲み取る看護師の立場であるからこそ、終末期医療の移行の判断に参画すべきと考え、医師と患者家族の狭間に立つという困難感を感じていると推察される。本研究において明らかになった対処方法のうち<あきらめる>を除く2つのカテゴリーは、今後のケアの指針になるものと考える。