第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O6] チーム医療

[O6-01] クリティカルケア看護におけるモニタリングの意味

○増田 喜昭1、森 恵子2 (1. 藤枝市立総合病院 看護部、2. 岡山大学大学院 保健学研究科)

キーワード:モニタリング、ケアリング、高度医療機器、急性・重症患者看護専門看護師

【目的】クリティカルケア領域の達人看護師がおこなう高度医療機器を駆使したモニタリングの実践知をもとに,クリティカルケア看護におけるモニタリングの意味を明らかにすること.
【方法】本研究において,モニタリングとは,3P(Pharmacology, Pathophysiology, Physical assessment)をはじめ医学的な知識を基に,患者の健康状態を包括的に評価し,臨床判断を行なう一連の思考プロセスと定義した.質的記述的研究デザインを選択した.研究対象者は,国内の病院に所属する急性・重症患者看護専門看護師とし,半構成的質問紙に基づく自由回答法による半構造化面接を実施した.半構成的質問紙は,『モニタリングで得た情報をどのようなものと捉えますか』,『モニタリングはどのような意味を成す行為だと考えますか』等の内容で構成した.データ収集期間は,2016年7月1日〜10月31日であった.面接内容の逐語録を作成し,Krippendorffの内容分析の手法を用いて,個別分析,全体分析の2段階で分析した.内容分析によって推論された最も上位の概念を「大表題」,「大表題」の下位の概念を示す用語を「表題」とした.倫理的配慮としては,所属大学院の臨床研究倫理委員会において承認を得た上で実施した.また対象者に対して口頭及び文書を用いて説明し,十分な理解と同意を確認した後,同意書への署名を依頼した.
【結果】対象者は5名で,全員女性だった.平均面接時間は74分,全逐語録はおよそ86,000文字であった.データの結果,個別分析で得た記録単位は212,そこから125の表題を得た.全体分析では22の表題にまとまり,最終的にクリティカルケア看護におけるモニタリングの意味として,《患者の快適性を推測しながら複雑な事象を解釈する》,《瞬時の判断と振り返りのサイクルにより看護ケアの意味を見出す》,《安全な範囲を柔軟に伸縮させながらニーズを満たす看護ケアを創造する》,《コンテキストによって数値の意味を補完し患者中心の医療を強化する》,《ありのままの体験の共有者を増やし社会との繋がりを支える》,《看護師−患者の相互作用がクリティカルな状況に立ち向かう力を引き出す》,《全人的に捉えた患者との関係性の中で生きる道を見通し伴走する》の7つの大表題に集約された.
【考察】達人看護師は,様々なコンテキストやわずかな経時的変化から患者の体験を読み解き,客観的情報と関連づけることによって,複雑な事象を解釈していることが明らかとなった.さらに,《コンテキストによって数値の意味を補完し患者中心の医療を強化する》では,客観的情報を用いて患者の快適性を合理的に説き,情報共有に努めている他,《ありのままの体験の共有者を増やし社会との繋がりを支える》では,患者の体験の共有に重点を置き,体験の共有者を拡大することで,社会との繋がりを修復していることが明らかとなった.また,《看護師−患者の相互作用がクリティカルな状況に立ち向かう力を引き出す》,《全人的に捉えた患者との関係性の中で生きる道を見通し伴走する》では,患者を先導する医療者−患者の関係性と,患者の主体性に応じる人−人の関係性の間で,柔軟で動的な関係性を構築し,看護師−患者の相互作用によって,看護師は「救命への熱意と看護実践の探求心」を,患者は「自律・回復」を獲得していることが明らかとなった.
【結論】クリティカルケア領域の達人看護師がおこなう高度医療機器を駆使したモニタリングの実践知をもとに,クリティカルケア看護におけるモニタリングの意味について分析を行った結果,7つの意味が明らかとなった.看護師-患者の相互作用の結果は,クリティカルケア看護におけるケアリングの象徴の一つであることが示唆された.